埋れ草

千宗左/講談社/1988年。

即中斎の書いた戦前戦後のエッセイの再録本。

"わび"昭和18年10月号「前線に茶箱を」を紹介。

わたしはかねがね茶箱を前線の勇士におくる運動を展開したいと念願している。
(中略)
戦地の勇士が寸刻の間、一服の茶によって動中の静を求め、あわせて栄養学的にも養素を摂取し、獅子奮迅、鬼神をも挫く戦闘の糧となる。
少しでも茶道が役に立つことを今日役立てねばならぬ。茶道報国にもいろいろの途があるが、これも正しくその一途たるを信じて疑わない。

いま読むと「どうなんだろう」って思うが、この時代の茶人の節操としては、たぶん正しかったんだろうと思う。

こんな思いで、わたしは皇軍用の茶箱を唯今製作せしめている。
高価のものはいらない。
戦闘に邪魔になったら、捨ててもいいものでなければならぬ。

そりゃまぁそうなんだが。


"わび"昭和19年1月号「冬の傾斜」にこの続報がある。

いつか誌上で述べたように、私はかねがね「前線に茶箱を」の願いを持っている。それがようやく望みを果たし、一閑製の茶碗と茶器、正玄作の茶筅茶杓入ができあがった。

ダメじゃん、発注先が既にダメじゃん。

浮世離れしているというかなんつーか。


しかしこの茶箱、少なくとも何人かの将軍クラスには贈られたみたいなんだが…どっかで現物が見れないもんかね?