歴史読本 武家茶道の系譜
昭和53年刊行の武家茶道特集。この時期茶の湯ブームだったのか?
林左馬衛さんは、
- 徳川家康は茶道の影響力を排除しようとし、熱心で平凡な徳川秀忠をして古田織部の後継者足らしめ、織部の流れを一種のお留め流にしてしまった。
- 各地の徳川家も市井の茶の湯者を単なる茶道としてめしかかえ、矮小なものとした。
- 武士にして茶の湯者になる事は一種のドロップアウトであるという位置づけであること。遠州も石州もメインストリームからのドロップアウト。
- ドロップアウト→アウトローとしての河内山宗俊
というそれぞれのトピックは面白いけど主題の取れない文を書いている。それ自体より林さんの茶道に対する意見が「柳営の内部で過去議論されたこと」を下敷にしているのが面白い。柳営は徳川家旗本を中心とした家臣団のことで、
http://www.tokugawa.ne.jp/j/news/2007/ryuei21.htm
という様な茶会にやってくる懐古趣味の団体。そういう認識だったのだが、「千家?町方だろ?俺達の家元は二代(秀忠)様だよ」という、一般大衆から隔絶した茶の湯の世界が存在する様に思える。
あと小堀宗慶VS細川護貞の対談。「下々の作るものに滅多にいいものはありませんねー」なんてお大名同士の怖い会話。宗実さんと護煕さんではこういう雰囲気は出せないだろうなぁ。
お茶雑誌の武家茶道特集は利休をルーツにした正統の流れを中心に語られる為、綺麗ごとに終始してにどう武張ってんだかさっぱ判らん事が多いが、歴史雑誌のそれはなんとも血なまぐさいし、歴史と系図と歴史伝承にインチキが多い事ぐらい読者は判ってるよね、という切口で語られててかなり面白い。