當世茶会心得 参
茶道口より半東が折敷を持って進み出ますので正客から順に受け取ります。
折敷には煮えたてのご飯が一口と汁、そして向付が載っています。
WHO勧告以来、向付には十分火の通ったものが入っている筈ですが、不心得にも刺身の類であった場合は食べずに残しても苦しくありません。
さて、ここで問題になるのがマスクの扱いであります。
マスクを上またはあごにずらし、懐石を口に運ぶ方もおられますが見苦しいものです。
まず懐紙を一枚出し、畳に広げ、両手をマスクの耳裏の紐に掛け外し、懐紙の上に載せ、懐紙を折って隠します。そこで箸を取り、懐石を口に運びます。咀嚼する前に箸を置き、マスクを左手で取って右手を添え両耳に掛け、それから咀嚼してください。
物を口に入れる瞬間だけマスクを外す、と覚えておけば良いでしょう。
一口を大きく取って食べると少し繁雑でなくなるでしょう。お互いに気遣いしながら、楽しく食べ、談笑してください。
さて、汁を吸い切った所で、亭主が酒と杯台を持ち出し、客に勧めます。
季節と趣向によりますが、日本酒の熱燗が出るので客は杯を受け、向付を頂きます。
つづいて飯器、汁替、煮物、焼物と続きます。
箸洗いの吸い物が終った頃、亭主が八寸と銚子を持って進み出ます。
亭主が正客に酒を注ぎ、八寸の海の物と山の物を取り分けます。
ここで正客から亭主に対し順に杯の応酬が行われます。これを千鳥の盃と申します。
安全の為、アルコール度数70度以上の蒸留酒が出ますから、次客以降は形程度にお酒を注ぐよう注意しましょう。
ついで亭主は湯桶と香物を持ち出しますので、椀を清めながら頂きます。
客は折敷を整え、返します。
この時箸を落す音をさせる方も居られますが、当世ではその必要はありません。
茶道口は常に空けてありますので、亭主が様子を見、取りに参ります。
折敷を返すと主菓子が出、それを頂いた後、客は座敷を出、待合に戻り、中立いたします。
(続く)