2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

7月の展覧会

例によって夏枯れ開始。 湯木は展示がある筈ですが、例によってHPでの告知が遅いので詳細不明です。 東京近郊 期間 タイトル 備考 出光美術館 7/30-9/25 東洋・日本陶磁の至宝 畠山記念館 7/30-9/11 茶の湯ことはじめ 根津美術館 -7/10 若き日の雪舟 雨中の…

君台觀左右帳記研究11

下絵の部の話。 東山義政の展觀に供せられたる幾多の繪畫は悉く大家名家の筆墨にあらずして間々無名人師の獨自なる筆墨を交へ居たるや察す可しである。 ということで、上中下の「下」にはなんだかよくわからない画家…つまり中国の有名画家でも、朝鮮の有名画…

君台觀左右帳記研究11

李尭夫に就いては宋人あるいは元人にして我邦に歸化し筑前の崇福寺に寓居したりと言はれ、現に其繪ける布袋和尚圖に寄堂李尭夫の款名を見るのである。 ということで、日本の画家について。 諭法師なる佛畫家も亦考察を要する一人である。 諭法師は其名から考…

君台觀左右帳記研究10

君臺觀左右帳記に於ける人名として其傳記不明なるもの少なからざるは既に述べたる通りである。 而も誤字誤記の為め殆んど其本人を知る能はざるものあり。 君台観左右帳記に載っている画家は、当時としても定評のある画家ばかりかと思っていたのだが、案外と…

永青文庫 千利休と武将茶人 茶入を中心に

なんだかんだで行けなかった展示をやっと展観。まず四階。茶入茶碗写真帖に驚く。 幕末頃の、細川家名物道具の写生したもので、非常によく出来ている。 博物画の影響も感じる。底の糸切りまできっちり描いてある。執念としかいえない。三階。まずは利休書状…

君台觀左右帳記研究9

中絵より、高然暉のミステリー。 高然暉の名は君臺觀左右帳記にのみ記載せられ殆んど其傳記を知ることが出來ない。 (略) 実に高然暉なる山水畫家は支那畫界に存在しないと言はざるを得ないのである。 彼は獨り東山義政に見出されて其名を君臺觀左右帳記に留…

君台觀左右帳記研究8

君台観左右帳記の「上繪」の部分を通読する。本書の基本的な構造はまず作家の時代と経歴を語る。そしてその画風が日本の水墨画界に与えた影響を語る。でも現存するその作家の作品は大抵偽物だ、と来て、真筆でも君台観左右帳記に載った義政の展観にあったも…

君台觀左右帳記研究7

牧谿の現物に関する批評。 某子爵家に傳はれる牧谿の竹雀図は如何にも逸妙である。 これか。http://www.nezu-muse.or.jp/jp/collection/detail.php?id=10391根津さんとこにある奴。 而も其畫面の右方上部に白文牧谿の印を捺したる外何等の落款文字を見ないの…

君台觀左右帳記研究6

李龍眠、李成、郭煕、徐煕、趙昌、易元吉、趙大年、成宗道、陳所翁と、画家の解説は続くが、割愛。んで牧渓。 僧牧渓の繪畫は其生前に於て到底我邦へ傳來したりとは考察することが出來ない。 何んとなれば彼の時代は蒙古と我邦の交戰前後なりしを以て全然國…

君台觀左右帳記研究5

王摩詰に次いで徽宗皇帝が置かれて居る。 北宋末の徽宗帝と言へば、帝王畫家として世界的名聲を揚げたる大家である。 所謂殿様藝にあらずして専門的藝術で而も其花鳥畫の如き實に古今の妙手であつた。 「殿様芸」というものの感覚がまだ残っていた時代とも言…

君台觀左右帳記研究4

曹弗興の佛畫に次いで君臺觀左右帳記に列記されたるは唐の呉道子と王摩詰とである。 此の二大畫家は古今の畫聖として知られたる人々で、今更説明を要せないのである。 呉道玄と王維摩詰。どちらも唐代の(伝承上の)有名画家、だそうである。どちらの作品も現…

君台觀左右帳記研究3

君台観左右帳記上巻の筆頭。つまりナンバー1絵画について。 曹弗興の佛畫と言へば、千七百年前の古畫である。 三國時代に於ける呉王孫權の為め、其塀に繪けりとのことなれば、實に古畫中の古畫に數へざるを得ない。 三國時代は我邦の神功皇后時代に當り、足…

君台觀左右帳記研究2

さて、絵画リストとしての君台観左右帳記の読み方であるが: 北宋末の徽宗帝は、宣和畫譜を勅撰して名畫を千載に傳へられたるが、而も特に其優劣を明かにせなかつた。 之れ畫譜に列記したる繪畫は、凡て名畫として其間甲乙の鑑別を許さなかつたからであらう…

君台觀左右帳記研究

松島宗衞/中央美術社/1931年。戦前の君台観左右帳記の研究書。 君臺觀左右帳記は東山義政の支那畫に關する觀賞を筆録したる古書である。 即ち其名の示すが如く君公の台觀に供したる支那畫に就いての鑑記で、其左右に侍したるものゝ筆録であらふと思ふ。 本書…

鎌倉不識庵精進料理十二ヶ月

藤井宗哲/実業之日本社/1994年。季節の精進料理のレシピとエッセイの本。精進料理ってのも覚えたいな、と思って買ったんだが 「禅味会」へ入会された、初めての方なら必ず、 「精進料理には、いりこやけづりぶしを使ってもいいのですか?」 と、訊かれる。 …

松花堂昭乗20

松花堂什物目録草稿より、当時の茶道具。 一 たいすノ銚ふろ 一 カンひ杓立 一 たいすノ水こほし一 わざわざ台子用と注釈の入った道具達。室町時代には台子皆具というのは無かったのだが、この時代には皆具が成立していたのかもしれない。 一 玉室一行物 一 …

松花堂昭乗19

松花堂什物目録草稿より、人間関係の判る記述。 一 せとかたつきあらみ 古田織部殿ヨリ贈る 織部と親交があり、茶入を贈られるくらいなんだから、遠州に師事して茶人になったというわけではないのではなかろうか? 一 漢誂風呂 松平紀伊守へかし申候伏吸齋手…

松花堂昭乗18

松花堂什物目録草稿。 すき道具一 國司茄子 一 七賢之盆 一 文琳 一ならから尻ふくら 一 古瀬戸 尻ふくら 一 かはつ 一 古瀬戸 肩ツキ 一 備前かたつき あらみ 一 古せ戸 水滴 一 古せ戸 小肩つき からノくみ物 一 くみもの中繼カン 一 中つき 一 ふくさ 一 …

曜変 陶工・魔性の輝きに挑む。

曜変天目の作り方に迫るETV謎番組。発端は、曜変天目の破片が中国で出土したから、破壊検査して再現しようぜって話。曜変の作り方の2説。酸性ガス説と重金属塗布説…。そして陶片集め…。多分、何十年か前に、志野茶碗で同じことを荒川豊蔵とかがやってたんだ…

松花堂昭乗17

昭乗の茶会記から。 十年三月十二日 並河刑部殿 横地助三殿 三郎佐殿 一 茶入 國司 (略) 同書院かざり 昭乗の茶会記には16例が収録されている。ちょっと少ない気もするが。 だが、そのどれも広間の茶である。侘びた風情は一切ない。まぁ国司茄子だのなんだの…

藤田登太郎 茶陶展

今年もお伺いし、先生のいろんなお話をお聞きする。…でも、さすがにその詳細を書くことはできない。 すばらしい志野を拝見し、手取りし、また先生のお茶をいただく。先生のいろんな面白いお話を聞き、人柄に触れる。そういう素晴らしい会である。それ以上の…

松花堂昭乗16

本書には資料として昭乗の茶会記も収録されている。 寛永申ノ口切 於鐘樓坊十年酉寛永九年申九月廿四日 初會江月和尚 小遠州殿 竹筑後 村不及 同左平 道閑宗玄一 茶入 國司 袋ハクコク 盆七賢 茶杓 玉ノ緒 一 茶碗 ひらの 一 釜うは口 以下同之 一 水指 四角…

松花堂昭乗15

昭乗の松花堂茶室。挿図より。 此の松花堂の平面圖は古筆の『八瀧珍藏録』に載せられ現存のものと同様である。 どこが同様なんだ…。 現在の松花堂は手前座の前、床の脇が袋戸棚になっていて、その下部が空いて、丸炉が設置されている。でも、この図ではツリ…

松花堂昭乗14

昭乗の遺蹟。というか松花堂庭園美術館の成立ち。 明治維新神佛分離の大變革にあひ、男山に多年昌榮を誇つた社坊も一切停止の已むなきに至つた。 京都府では明治七年の頃、槇村知事が社坊撮取拂を厳命した。 八幡石清水社みたいな、八幡神を信仰する真言宗み…

松花堂昭乗13

昭乗の作庭。 桃山時代・江戸時代初期は茶道の發達につれて庭園も多く營まれ、特に茶庭が出來 た。 小堀遠州は従來の林泉式庭園に茶の要素を加味したのである。 爾來遠州流の庭園は廣く江戸時代を通じて數寄者に迎へられた。 昭乗は遠州に相談して庭園を作つ…

松花堂昭乗12

昭乗の蔵帳。 次に八幡名物には如何なるものがあるかを簡単に説明する。 歌詠及び書畫の類には飛鳥井雅經の詠曉紅葉和歌・藤原清範の詠曉紅葉和歌・飛鳥井雅縁の春日侍平野社寶前問詠寄神祝言和歌の各懐紙、定家の大願書・小願書・定家・為家兩筆の和歌・一…

松花堂昭乗11

昭乗の…あるいは瀧本坊の道具について 瀧本坊には昭乗の數寄により書畫茶器の珍蔵多く、此等は稀覯の神作を蒐めたものである。 此等の道具は昭乗の茶會に飾り或は用ひられ、客の目を驚かし讃歎せしめたものであらう。 松花堂昭乗は国司茄子を所持していた。 …

松花堂昭乗10

昭乗の茶室。 昭乗は閑雲軒といふ席を作つた。 此の席に就いては「男山考古録」の記録と西村氏の所説が多少異つてゐる。 前者によれば閑雲軒は瀧本坊の客殿と北の奧鳴門の間(十二帖)との續き軒合せの所で一間半四方の一室を構へたのである。 床は間半にして…

松花堂昭乗9

昭乗の逸隠數寄の生活は蓋し西行法師を慕つたものであらう。 男山は都に近く修行には困難であるから、大和吉野山の奧へ行かうと思ひ立つた。 或夜しばしまどろむと、夢の中に知らぬ翁が現はれて大菩薩の仰せとて こと山のもみぢをたづねゆかんより あふぐた…

松花堂昭乗8

日本・支那に於て書は繪畫と其の軌を一にし、随つて趙子昴・董共昌・文徴明等の如く、書道に長けたる者は同時に繪事に於ても造詣深いのが常である。 昭乗また其の例にもれず、彼の書道はやがて一方に順致あり風骨ある絵を畫かしめた。 というわけで昭乗の画…