2013-10-01から1ヶ月間の記事一覧

11月の展覧会

関東は根津。関西は香雪。 今年の秋は結構豊作である。 東京近郊 期間 タイトル 備考 三井記念美術館 -11/24 国宝「卯花墻」と桃山の名陶 出光美術館 -11/4 仙涯と禅の世界 畠山記念館 -12/15 書の美 御所丸 堅田 根津美術館 11/2-12/15 井戸茶碗 戦国武将が…

利休真流茶の會圖式3 主のし臺持出す圖

迎え付け→席入り→亭主挨拶の後の部分。 主のし臺を正客の前へ出しをきて戻りあとに客は名々にこれをいたゞき臺は勝手口近へ御詰より置くべし 此事は中古より茶席にも行へるなり實は不好 次に主は御膳さし上ると挨拶して水屋へ入り膳部あらたむ。 図はこんな…

利休真流茶の會圖式2 袴着より腰掛へ行圖

明治28年頃のお茶。宗偏流あるいは表千家の茶事が判るという意味で貴重な本。まずは袴付に客が来たあたりの話。 ○袴着より腰掛へ行圖客待合に相揃はゞ板を撃て腰掛へ參るべし 主は板をきゝ身分相應に着衣し床掛軸錺付露地手水鉢改ため猿戸をあけて客の前へす…

利休真流茶の會圖式

久田宗園/岡本偉業館/1895年。明治28年の茶の湯入門書。 故 不滞庵一竹翁 中根一竹宗匠半床庵 久田宗園宗匠 柳葉庵 福島良三大人 合著 とある。 半床庵 久田宗園は時期的に10代玄乗斎だろうか。 この年にお亡くなりになってはいるが。 ちなみにグラビアペー…

茶杓の湯矯め

火矯め以外に湯矯めも試した。いつもあまり柔らかくなってくれないので、今回は圧力釜で10分程煮てみた。蒸気を強制排気し、熱々の所をシリコンの鍋掴みで掴んで曲げる。すばらしくグニャグニャ。感動的な程だ。 水で急冷して、乾燥させる。 数日後:あれー…

茶杓の火矯め

西山松之助「茶杓をつくる」に触発されて、竹を曲げてみた。アルコールランプを使い、あせらずじっくり、焦げても気にせず炙ってみた。やっぱり焦げた。まぁ想定内。 あと西山松之助の言う程「飴のように柔らかく」はならなかった。これも実は想定内。幅を広…

国宝「卯花墻」と桃山の名陶

「卯花墻」国宝公開義務のノルマ展示(ぶっちゃけ)。何回も見たものも多いが、でも良いものは良いので。 まず展示室1に黄瀬戸立鼓花入。何度見ても良い。どんな花入れればいいのかよくわからんが。志野茶碗「通天」。低い台形で斜めに土が盛られている様な不…

利休を巡る色々6 センノリキュウの誕生

千利休を「センノリキュウ」と読むのは不敬である。だから「センノリキュウ」は「当時としては」実在しなかったのだ、と私は思う。では「センリキュウ」はどうか?利休は居士号で、在家の仏徒である。 居士号は居士号単体で呼ぶものだと思うのだが、名字の田…

利休を巡る色々5 センノ

利休と秀吉には奇妙なねじれがある。利休は「センのリキュウ」と呼ばれる。 秀吉は「トヨトミヒデヨシ」と呼ばれる。本来、千利休は単に「センリキュウ」であり、賜姓の豊臣氏である秀吉は「トヨトミのヒデヨシ」と呼ばれるべきなのに、である。 ここからは…

利休を巡る色々4 千という名字

利休は秀吉政権のブレインとして活動していた事が知られている。しかし彼はあくまでも市井の商人である。 後年千家は、「千家由緒書」で田中家を里見家の血を引く(つまり徳川と同じ新田源氏である)と説明しているが、あくまでも大名家出仕の為の方便であろう…

利休を巡る色々3 居士

次に居士号についての疑問。利休居士号が禁中茶会の遥か以前からあったのではないか?という話ではない。 そっちはどうでもいいと私は思う。 私には居士号は「無位無冠」をなんとかできるような公式なものだったのだろうか?という点が気になる。 宮中に行く…

利休を巡る色々2 参内と昇殿

まず居士号を考えるにおいて、その前提である「無位無冠だから参内できない」という前提が本当か考えてみたい。 まず、参内と昇殿の違いについて考える。昇殿は、天皇の政治場所である清涼殿へ上る、ということ。 参内は単に御所に行く事から昇殿までを含む…

利休を巡る色々

千利休。田中与四郎/千宗易が利休と呼ばれる様になったのは、天正13年の禁中茶会がきっかけである、というのが定説。つまり「無位無冠では禁中茶会に出る際に困るので、居士号として貰ったのが利休の名」である。兼見卿記 天正13年10月7日にはこうある。 次…

茶ァ喰らい爺 負の民俗学4 チャアクライジジイのこと

余った茶を田の畦に供えて(捨てて)いた老婆との会話。 「どうして田の畦にお茶をお供えするんですか。」 「田の畦にはな、チャァクライジジイがいてるさかいな、ほんで、それにオマシてくるんや」 ここから茶ァ喰らい爺の考証が始まる。無駄になったものも、…

茶ァ喰らい爺 負の民俗学3 オチャト

本書には近畿地方の盆の風習、オチャトについて記述がある。 (事例3) 河内長野史 第九巻 別編一 昭和五十八 河内長野市役所盆の供え物の中で忘れることのできないものの一つにオチャト(茶湯)がある。 どこでもオチャトの数は大体決まっていたようであるが、…

茶ァ喰らい爺 負の民俗学2 ヒサカキとお茶

町の花屋さんで、祓いのときに用いる長めの榊葉を求めようとしたことがあった。ところが、「あいにくと榊は切らしているうから、これにしなはれ、今はみな、このビシャコを使ってます」ということであり、手に入れたのは、ヒサカキであった。 ということで、…

茶ァ喰らい爺 負の民俗学

原泰根/初芝文庫/1994年。「マンマンチャン、アン」についてとか、そういう地域に残る習俗や言葉を扱った本。茶書ではない。「第一章 仏には水かお茶か」より: それはそうと、家で仏さんをまつるのに、どうして水を供えるんだろうか」と大波廣氏。 (中略) …

下克上

利休の最初の妻、宝心妙樹は三好長慶の妹だったという説がある。 ネットではちょこっと見掛ける話だが出典は判らない。なんかの小説由来かもしれない。出典も根拠も明らかでない情報を流布するのはデマを再生産する馬鹿のやることではあるが、面白い説なので…

茶杓をつくる9 最後に

本書は茶杓の作り方に関し、順を追ってエッセイを書いたものである。なのでかならずしもノウハウが入っているとは限らない。削り方や櫂先や切り止めの形を説明してくれているが、そんなに興味深くもないのでばっさりオミット。だが: それと、樋が深いために…

茶杓をつくる8 狂い竹が面白い

茶杓で楽しく面白いのは狂い竹のものである。 本格の儀式に用いるような茶杓は、順竹の白竹の、どこにも傷もシミもない、清純端麗なものがよいことはいうまでもない。 来歴はさておき、茶杓の表現には曲げと削り以外には竹自体の面白さしか見どころはない。 …

茶杓をつくる7 蟻腰、雉子股

次は順樋について記したいと思う。 まず第一に逆樋と順樋のちがいは、逆樋は節裏を刳り取ることが、竹の構造上不可能である。 これに対し順樋の竹は、初期の名作はほとんど例外なく、かなり深く節裏の部分を削り取っている。 (中略) 現代の茶道各流では、こ…

茶杓をつくる6 順樋と逆樋

古い伝書には「さかひはくらず」というように書いてあるが、そのように、逆樋の茶杓は竹の構造上、次ページの写真のように中節の裏側を直線的に削るのが原則である。 順樋の茶杓は節裏を大きく削る蟻腰にできるが、逆樋はそうできないとここでは言っている。…

10月の展覧会

すっかりまとめるのを忘れてた10月の展示。斎田記念館と表千家北山会館という、滅多に展示しないトコが展示するのがトピックか。でも関西は11月になって香雪が展示してからの方がいいかもね。 東京近郊 期間 タイトル 備考 三井記念美術館 -11/24 国宝「卯花…

茶杓をつくる5 荒削り

私は長い間、竹閑さんから教わった通りに、曲げてから三週間くらいはよく乾燥させ、それから縛っていた紐を解いて、それを削っていた。 しかし私は、曲げた竹はもうそのまま元にもどらないのだから、すぐその場で荒削りしてもよいのではないか、と考え、誰に…

茶杓をつくる4 むずかしい櫂先の曲げ

櫂先の曲げは難しい。というか、私にとってこれは何もかもを駄目にするプロセスといってもいい。 湯だめ法を教えて下さった洛北大原の北山竹閑さんのやり方で曲げてみたが、これは、素人の私にはたいへんむずかしい。 これは右の手の拇指で熱いところを曲げ…

茶杓をつくる3 煤落とし

煤竹は百年も二百年も煙でいぶされ、まことに汚れたいぶし竹になっているので、筒も茶杓も、この煤を洗い落さなければ用には立たない。 ところがこの煤落としが、私にはたいへんむずかしかった。 私も煤竹もらったことはあるが、ティッシュで拭くだけだった…

茶杓をつくる2 竹取りの翁

茶杓作りには、何よりもまず、よい竹を手に入れることが第一である。 もう二十年近く前のことになるが、わざわざ東京から新幹線に乗って但馬の山奥の寺に煤竹をもらいに行ったことがある。 (ざっくり中略) 東京高師時代の同級生である丹波園部の高校長・井口…

茶杓をつくる

西山松之助/読売新聞社/1992年。茶杓研究家でもある西山松之助の茶杓に関するエッセイ本。序文より: こうして目ぼしい茶人数十人の代表的茶杓を五百本余り調査してみると、それまで教えられたり書いておられることが、きわめて僅かの茶杓しか見ないで論じた…

利休の逸話とヴォイニッチ手稿

…さてこのヴォイニッチ手稿ですが、お茶の世界では室町時代中期に書かれたと考えられています。 まだ利休のお茶よりも前の、台子と広間のお茶の時代です。上記の様にヴォイニッチ手稿の示す厳しい美意識は、広間の茶の湯を楽しんでいた当時の豪商や貴族・武…

利休の逸話と不思議の国のアリス

急にアリスはひらめきました。「じゃあそれで、お茶のお道具がこんなに出てるのね?」「そ、そゆこと」と帽子屋さんはためいきをつきました。「いつでもお茶の時間で、あいまに洗ってるひまがないのよ」「じゃあ、どんどんずれてくわけ」とアリス。「ごめい…