2015-04-01から1ヶ月間の記事一覧

木村茶道美術館

ひさしぶりの木村茶道美術館。新潟県柏崎市、という立地は、なかなかに行きづらいが、行くと素晴らしい体験ができるのもまた確か。 第1展示室は水指展。水指は、木村さんの美意識がぴしっと通っていて、派手なものも地味なものも、どれも上品でやや侘びた風…

喫茶南坊録註解15 茶会記

南坊録の「会」。この茶会記の時期を、柴山不言はどう考えていたか。 此ノ日記ハ何年ノ記ナルヤ。 此ニ去年ト云ヒ、此九月ト云ヘルハ、何年ナルカ之レヲ知ルニ苦シム所ナリ。余ヤ頗ル考究シテ、此ノ日記ハ天正十年十月ヨリ同十一年九月マデノ者ナリト推定セ…

喫茶南坊録註解14 叶ふかよし

客亭主互の心持如何様に得心して可然やと問、 易の云ふ、いかにも互の心に叶ふかよし、然とも叶ひたかるハあしし、 (略) されハこそ叶ふハよく叶ひたかるハあしし。 この有名な部分の解説。 此ノ一誡言簡ニシテ意深シ。 実ニ茶道頂門ノ一針ナリ。 (略) 本当…

畠山美術館 畠山即翁の大師会茶会

「なんか空いてた」 それが第一印象。 今回の展示は、即翁の大師会茶会で出した道具に、鈍翁の道具を合わせた展示。ぶっちゃけ過去の大寄せの、跡見の茶会。お客さんも鋭敏である。レベル低いと思って来やしねぇ。…実際いつもの展示よりぐっと格は落ちる感じ…

藤田登太郎 茶陶展

畠山記念館の茶室、明月軒と翠庵を使った、藤田先生の茶陶展。藤田先生の茶碗を、目と、手と、舌で楽しませて頂く。五感を使いまくるので、普通の展覧会よりずっと頭が疲れるね。 たっぷりした志野茶碗、「雲珠花」。すくっとした「奈良川」。黒々として、で…

喫茶南坊録註解13 宗悟と宗陳

此ノ項ハ茶道ノ系統ヲ叙セル者ナリ。 総論ニ述ベシ如ク、能阿弥ハ真態茶道ノ祖珠光ハ行態茶道ノ祖、紹鴎・利休ハ草態茶道ノ祖ナリ。 能阿弥は真、珠光は行に比定すると、足利義政はどっちだったのか?というのがややも曖昧になる気が。 宗悟は蜂谷氏、十四屋…

喫茶南坊録註解12 真と草

本書第2巻部分から、南坊録の注釈が始まる。対訳方式で、 覺書 トハ心ニ忘レズ、記憶ニ留ムル為ノ記録トノ意ニテ、此ノ文ガ自己備忘ノ私書ニシテ、敢テ他人ニ示ス為ノ書ニ韭ズトノ謙意ナリ。 宗易ハ利休居士ナリ。 と「え?そんなトコまで注釈入れちゃうの?…

喫茶南坊録註解11 藤四郎唐物

唐物ニ二種アリ、 一ハ漢作唐物ト云ヒ、他ノ一ハ藤四郎唐物ト云フ。 其ノ漢作唐物トハ漢製ノ舶来セシ者ニシテ、藤四郎唐物トハ尾張瀬戸ノ陶祖加藤四郎左衛門景正(略シテ藤四郎ト呼ブ)ガ入宋シテ陶法ヲ學ビ、 其ノ帰朝ノ後、曽テ彼邦ヨリ携ヘ帰リシ宋土ヲ以テ…

喫茶南坊録註解10 居住居

手前ノ時、身構ヘノ方向如何ニ定ムベキカ。一 四畳半ノ炉 其ノ詳カナルコトハ本録三(三三)ニ載セタレドモ、其ノ大要ヲ記センニ、疊勝手附ノ全長ヲ五矩ニ割リ、又炉縁ヲ三ツ割ノ矩二シ、之レニ図ノ點線ヲ施セル者、即チ身構ノ方向ナリ。 例はこんな図。畳の全…

カネワリと黄金分割

たまに、曲尺割を「西洋の黄金分割と同じ物」みたいな解説をする人がいる。…ぜんぜん違います。 黄金比はのこと。 短辺長辺を上記の比にした長方形から、正方形を抜き取っても、残った長方形は元の長方形の相似形になる、というもの。詳しくはWikipediaでも…

南坊録と曲尺割

ちょっと本自体からは脱線する。南坊録のカネワリ。なんでこれが南坊録の象徴、みたいになっているのだろうか? もちろん、南坊録そのものの「墨引」に書いてあるからである。 御坊ハ深切ニ工夫シテ、如此問尋ラルヽコト、我等か鴎ヘノ心入ヨリマサレリ。 イ…

喫茶南坊録註解9 カネワリの問題点

曲尺割(カネワリ)は、南坊録最大の秘事、ということになっている。道具を等分した畳のポイントにどう置くか。 置いた道具の丁半をどうカウントするか。そういう技である。 でも、これって亭主主観であって、多分、客には判らない。客座からみて「あ、二のカ…

喫茶南坊録註解8 矩ノ活用2

さて、カネワリに変化を与える方法を紹介する。 一 續キ矩数個ノ器ヲ置キ合セシ関繋ニヨリテ、陰飾ヲ陽飾ニ変化スル法則ナリ。 即チ此ニ一個ノ器ガ陰矩ニ在ル時ハ、無論陰飾ナリ。 然レドモ其ノ左右ノ陽矩ニ各他ノ器ヲ置ケバ、中間ノ陰ハ変ジテ陽トナル者ナ…

喫茶南坊録註解7 矩ノ活用1

さて、大変めんどくさい印象のカネワリ。 前項ニハ矩ノ汎則ヲ説ケリ。 是ヨリ更ニ進ミテ其ノ細則ヲ説カン。 之レヲ矩ノ活用ト名ヅク。 此ノ活用ハ甚ダ繁多ナレドモ、之レヲ熟得シテ自由ニ操縦スルコトハ茶道ノ生命ニシテ、之レガ練達ヲ得バ、其ノ回轉滑脱、…

喫茶南坊録註解6 矩割ノ解

矩割トハ臺子、床、違棚等ニ器ヲ置クニ、其位置ヲ定ムル標準ニシテ、真態茶礼ノ原則ナリ。 然シテ行・草ノ茶礼モ亦必ズ此ノ定規ヲ逸スルコトナクシテ活動スルヲ法トスル者ナレバ、此ノ規則ハ真草一貫ノ法則ナリ。 ということでやおらカネワリ。 矩(カネ)トハ…

喫茶南坊録註解5 飾ノ陰陽

利休云ハク茶ハ礼ナリ敬ナリト。 然ラバ主客應對ノ間、必ズ節度ナカル可カラズ。 乃チ其ノ會の吉凶慶弔ニ應ジ、器ノ配置増減ニ斟酌アリ。 能ク其ノ主客ノ感情ニ適ヒ、其ノ會ノ性質ニ副フコト、是レ斯道ニ於テ重要ノ事トナス。 即チ之レヲ飾ノ陰陽ト云フ。 総…

喫茶南坊録註解4 真行草

著者は茶の湯の歴史と真行草の話をしているが、それはオミット。真行草の関連性の話のついでに出た、著者のぼやき。 此ノ一貫ノ定法ハ系統アリ聯絡アリテ、一糸乱レザル者ニシテ、古時ハ之レヲ茶道ノ生命トナシタル者ナリ。 然ルニ現今ノ茶界ニハ其ノ要理ノ…

喫茶南坊録註解3 総論

南坊録ノ記述ハ毎巻各別科ヲ叙シテ、他巻ト聯絡スル所ナシ。 而シテ其ノ第一、第二、第三巻ハ草態ノ茶則ヲ説キ、第四、第五ハ眞態ノ諸則ヲ説ク。 然レドモ其ノ第六巻以下ハ全ク趣ヲ異ニス。 此等諸巻ハ前五巻ニ記スル者ノ原理ヲ説明スルノ観アリ。 此ノ如ク…

喫茶南坊録註解2 緒言

本書の原著は昭和3年で、刊行はされていない複写頒布品。 当然昭和40年代とは状況が違っている。 なにがって?南坊録のポジションがだ。著者の緒言より。 夫レ茶道ハ礼法ニシテ遊戯ニ非ズ。 故ニ其ノ応対進退ノ節、一々コレガ原理ナカル可カラズ、 然ルニ近…

喫茶南坊録註解

柴山不言/茶と美舍/1972年。即中斎の序。 序碌々斎の門下柴山不言翁の畢生の大著「喫茶南坊録註解」が、この度、数江教一氏の校訂を経て「茶と美舍」より公刊されるという。 南坊録は、古来いろいろ難しい問題を含む茶書ではあるが、利休居士の茶を知るには…

茶道入門9 先哲の教え

最後に。著者の語る武野紹鴎について。 武野紹鴎はどちらかと言えば数寄者でありまして茶の湯者でなかったと思います。それと反対に千利休は茶の湯者にして数寄者でなかったことは、二人の伝記や逸話や言行によっても想像されます。 もし珠光法師を加えて、…

茶道入門8 風炉薄茶点前

本書に見る志野流のお点前のポイントを抽出する。 男子は片手扱い、女子は両手扱い 建水は左手/柄杓と蓋置は右手で持ち込む 帛紗は二度鳴らす 捌いた帛紗の輪の方で薄器は拭う 右手に帛紗を持ったまま右手で柄杓を取り、片手のまま鏡柄杓し、次に左手で柄杓…

茶道入門7 茶碗の拭き方

本書にはお点前の入門編も載っている。 大変珍しい志野流のお点前である。ただ、僅かな挿絵+くどい文章で説明されており、非常に解読が難しい。そんななかで、あんまりな挿絵があった。 茶巾で茶碗を拭く時、ひっくりかえす、の?該当部分の文章は以下の通…

利休

このまとめを読んで、草不可避。http://blog.livedoor.jp/darkm/archives/51746473.html 「利休を超えよーぜ!!!」 この一言が、織部没後400年に発せられた奇蹟よ。これを読んだ後では「利休に帰れ」とか、もー辛気くさいだけだよね。 僕等、芸事を嗜むも…

茶道入門6 懐石の次第 大寄せ

しかしここに一つの疑問が起ってくると思います。 なにを目的に寺院やデパート等で大茶会を催すかということです。 東京に例を引いてみますと、音羽の護国寺、上野の寛永寺、新宿の茶道会館その他におきまして、一日に三百人から五六百人の人々が出入りして…

茶道入門5 懐石の次第 茶会の話

著者の苦言。 近年お茶が盛んになって参りましたことは、まことに喜ばしい現象であります。 ところがそれにともないまして、茶会が非常に流行してきたのであります。 この茶会も、昔から行われておりますけれども、昔の茶会は何の弊害もなく面白く、愉快に楽…

茶道入門4 茶事茶会

迎え付けから。 普通ならば、この待合において正客となるべき人を決めるのでありますが、 特別の場合には主人が指名することもあります。 自分は茶事の大事は客組だと思っているので、この鷹揚さは理解し兼ねますわ。 亭主はまず正客を決め、それに合う面子…

茶道入門3 客の心得

さて、お茶会の流れ。 客としては、当日主人に対して適当なお土産物を持参することと、必らず案内の時刻の十分程前に参着しなければなりません。 時間厳守よりも前に「おみやげ持ってけ」が入っているのが驚き。…お茶の悲しい変容である。 かりに午前十一時…

茶道入門2 珠光時代

木下桂風さんは、 今ではどこの茶舗でも機械挽きとなり電力をもって臼を廻しておるので、茶があまりに細か過ぎてまずくなりました。 抹茶はやはり手挽きに限るようであります。 みたいななんとなく為になることも書いてくれますが、歴史認識はいまいち不思議…

茶道入門

木下桂風/愛隆堂/1964年。序文より。 上品で奥床しいお茶の道は、私達の心をなごやかにし、生活の憩いをあたえてくれます。 序文の最初がこの文章で、裏拳で突っ込みたくなったわ。 明治28年生まれの著者は、近代数寄者の時代を知っている筈。茶が、おくゆか…