2012-08-01から1ヶ月間の記事一覧

茶道客の心得

井口海仙/河原書店/1941年。戦前のお茶の入門書。ちょこちょこっと面白い部分をつまんでいく。 茶席の種類と疊の名稱お茶に招れて行くには、先づ茶席の種類と疊の名稱を知つておく必要があります。 えー?「この茶室は深三畳台目ですね」とか、ここは貴人畳…

9月の展覧会

シーズンがやってきました。こんなかではサンリツの「箱は語る」がひかれるね。 東京近郊 期間 タイトル 備考 出光美術館 -10/21 東洋の白いやきもの 併設 仙涯 畠山記念館 -9/17 ふしぎ発見!茶道具と銘をめぐる物語 根津美術館 9/8-10/21 平家物語画帖 展…

大寄せの経済

私の理解している大寄せの経済構造を図示してみた。 大寄せの運営者は、茶室の持ち主から茶室を借りる。そして各流派に茶室を割り当て、茶券の販売と、運営サービスを実施する。各流派の先生方は、茶室と各種サービスの代償に、販売しなければならないチケッ…

懐石サントリー

淡交社/1980年。懐石っぽいメニューに、サントリーオールドを取り合わせ、フルカラー200ページの本を作ってみました…といった本。 屁みたいなポエムに、ちょっとしたレシピ。そして美麗な写真。なんたる無意味か。 そもそも、懐石、といいながら、全体の組み…

スネガード

正座をすると足が痛む。この症状は、足の痺れとはまったく別のものである。足の痺れは、膝下あたりでの動脈圧迫などによる血行不良が原因。足の痛みは、(私の場合)足の甲がぐりぐり畳に押しつけられる事が原因。後者に関しては前に「レガースみたいなものが…

茶道要鑑18 総括

茶道要鑑は瑞穂流と言う、おそらく当時でもマイナーな流派の家元の書いた茶書である。かなりひねくれた感性が全体を貫いていて、そこそこ楽しい。しかし、実はこの本、ものすごく珍しい視点で書かれた本なのだ。 それは「利休」という言葉が一切出てこない事…

茶道要鑑17 客作法

さて、例によって中立の作法について。 報せの喚鐘または鉦が鳴れば、主人が直接迎ひに來たのと同じであるから、上客は腰掛より挨拶石まで出でて謹んで之を聴き、高話や大笑ひなどして、報せの合圖を知らず過す樣では失禮だから、能々心得ねばならぬ、 瑞穂…

茶道要鑑16 心得のうた

瑞穂流の道歌。1.薄板は床の眞中へ据へて見て奥へ一寸入れて置くべし 2.懸物をかけて置くには壁はまづ三四分すかし置くものぞかし 3.盆景を飾りし時は山水の掛物などは差合と知れ 4.花入の折釘うつは敷居より指尺六つあけて打つべし 5.小室の壁腰張高く張て…

茶道要鑑15 亭主

夫に心得て貰ひたいのは、主人を指して亭主といふことである、敬語を用ゐた積りで、御亭主など云ふが、亭の字はアバラヤと讀み即ち荒敗したる家である、他人を指して御亭(あばらや)の主では、不敬も甚しい、ご主人とか御茗主とか呼で貰ひたい。 確かに、茶室…

茶道要鑑14 茶碗

夫から間違て居るのは、彼の茶器の古きを賞する點である、 新しい茶碗は土の香があり、漆器は漆の香が脱けぬから、茶の香氣を害ふとあつて、自然古きものを尚ぶのである、 う、あぶない、納得しかけた。この理屈だと、美的にどうこう関係なく、古ければ余計…

茶道要鑑13 釜敷

五代の瑞穂一眞が、或る時お茶事をしたのは宜いが、お炭を仕る段になり、什麼した工合か、羽箒と釜敷を持ち出ることを忘れたサア大變だお客は眼前に居るし、水遣へ取りに入れば、忘れたことが判つて後で笑はれるのも悔しいと、偖て茲で頓智が必要だ、其時一…

茶道要鑑12 床

ソレカラ諸君の座敷の中に納屋があるのを御承知か、本名を床といふのであるが、床を床として使ふて居らぬ、 先づ床の上を見ると、琴があり、碁盤があり、茶道具または書籍箱偖ては置時計、花瓶もあれば軸も懸つてある、卓に香爐と何くれとなく和洋折衷で、飾…

茶道要鑑11 もてなし

或時瑞穂五代の一眞宗匠が豫て茶友の指物や某を突然訪ふた處、某は大變喜んだが、至急の仕事をして居るから、今宗匠を待遇す譯には行かぬ、華主先も大切であるから、暫時待つて貰ひたい、左すれば手が隙くからといつて、宗匠を待たせて置き、軅て仕事も終つ…

茶道要鑑10 千金

例之ば千圓の茶碗で飲むのと、拾錢の茶碗で飲むのと、其味に異つた事はない、 千圓の器物といへども、曠は漸く一度にて、二度目からには古臭い、尚一品で千圓の物ありとすれば、萬事萬端それに準じて釣合ふ品を用ゐねばならん、千圓の茶碗に、拾錢の棗では權…

現存流派

「茶道要鑑」は「瑞穂流」の家元の書いた茶書である。 瑞穂流は、少なくとも先々代までは教授とかして来なかったらしい。一子相伝と言えばかっこいいけど家庭内家元。 この時期はどうだったのか不明で、今存在するのかも良く分からない。 こういう特殊な流派…

茶道要鑑9 茶の湯の濫觴

偖て點茶の始めは誰であるかといふに (中略) また珠光は能阿彌、相阿彌の外、宗陳、宗悟に傳へ夫より瑞穂、紹鴎に至り、茶道は全く大成し、此兩人相圖りて臺子眞行草四十八段の法を頒ち、膳部を眞行草三式九段に區別したのである。 此の瑞穂こそ當流の祖先…

茶道要鑑8 總論その2

人は何故「今風の形骸化した茶の湯をするのか?」に関し、瑞穂流玉置一成はこう結論する。 然るにこの茶道が何故に虚榮心を高むるの具になつたかと云ふに、茶は高尚なものである、上品なものであると云ふのが普通一般に認むる所である、デあるから此の高尚な…

茶道要鑑7 總論

さて総論。…これまで紹介したのは、実は巻頭言で、あって、なんと本文はここからだったりする。飛ばしすぎだよ瑞穂流。 當時到るところ茶の湯を玩ばぬものが無いと云ふほど流行つて居る、この茶の湯が流行するに従つて一方茶道の方は、或は之れと正反對に退…

デオドラント

夏のお稽古。稽古場の拭き掃除なんぞした日には大汗をかく。汗は拭き、着替えて稽古に挑むものの、それでも先生に「汗臭い」と指摘を受ける。…どないせいっちゅうねん。 というわけで、デオドラントがこの夏のテーマ。条件としては、出先で発汗後に使用する…

茶道要鑑6 如何に教授すべきか

今度は師匠側の事情。 凡そ師匠として、子弟を教授する上に於て、始終頭を痛め腦を懣まし、早く上達せんとするは、獨り吾人のみにあらずして、誰しも欲する所ならん、然れば此教授の方法に就ては、技術より先きに進めんか、理より先き説かんか、孰れの道を採…

茶道要鑑5 師を選べ

其の良き師を求むると云ふ事は中々困難であつて、初めて習ふものヽ眼には、孰れが可いか不可いかの識別がつかん、只だ茶筅さへ弄くれば點方と思ひ、木を曲げれば生花と思ふて師匠の選擇はせず、隣家の人が習ふから我も習ふといふ、交際稽古では寧ろ習はぬ方…

茶道要鑑4 舊燈を用ふる必要はない

余はしばしば夜會の茶の湯の席に臨みたるが、今尚ほ舊習を捨てずして、短綮若しくは竹綮或は雁足、菊燈臺偖は結び燈臺などの類を用ゐて居る向きもある。 聞く處に據れば、薄茶なればランプを用ゐて差支へないが、濃茶となれば矢張舊燈を用ゐるが式であると、…

茶道要鑑3 濃茶の飲廻しに就て

當流では仕ないが、今尚飲廻しと稱して、一つの茶碗に數人分の濃茶を煉り、上客より末客まで順に飲み送る習慣を廃めず、依然として舊例を守つて居る向もある、衛生を重ずれう今日、恐らく之ほど危険な事はなからう。 瑞穂流さんは吸い茶否定派なんだね。 …で…

茶道要鑑2 器物の鑑定に就いて

茶人と云へば必しも、器物の鑑定に巧みなるものと思ひ、茶人自らも又鑑定を能くするを以て、誇りとして居る、然しながら此鑑定が、果して眞僞を識別する事の出來得るや否やは、大に疑問とする所であつて、予は之を識別するの眼識が無い、寧ろ無きが當然にし…

茶道要鑑

玉置一成/前田書店/1915年。大正四年の茶書。著者は「瑞穂流」という茶道流派の家元。緒言から: 然し、此趣味も一朝解し誤る時は、茶道も一種の道樂に過ぎないもので有て、茶室は贅をつくし,器物に高金を投じながら有合せの器具を用ゐし如く見せかけ、其實…

茶の湯作法8 中立の作法

この時客方より「休息いたしたうございますから、お腰掛け迄參ります。御迎ひ附け恐入りまするから、お鳴物にてお報らせを願ひます」斯う挨拶をいたすのであります。 客から中立を申し出る作法ははじめてだなぁ。昭和初期の裏千家はみんなこうだったのだろう…

茶の湯作法7 炭の使用方

只今炭を切りましたが、さてこれを使ひまするには、何ういう風にするかと申しますると、この切炭を一度米の空俵の上に並べまして、俵に火をつけてこの炭を一度焚くのであります。 さういたしまして、この米俵の燃え盡しました時に炭を水消しいたしまして、能…

茶の湯作法6 帛紗

帛紗には種々色がございますが、この帛紗の色合は紫、黄、紅−所謂緋帛紗−大略この三ツでございます。 この中紫は主に男子が之を使ひます。 又御婦人は紅−緋帛紗でございます。 尤も御婦人も四十歳以上になりますると、紫の方が取合ふのであります。 又茶にな…

茶の湯作法5 歩き方の練習と名人の苦心

私の師匠−最早故人になりました裏千家十一代又玅齋玄室と申します宗匠でありますが、此の方は存命中手前の名人と申された方でありますが、宅に居られまして暇がございますと、始終座敷の廻りをすうすうとお歩きになるのであります。 さう致しまして二度三度…

茶の湯作法4 姿勢

御婦人の方は同じ姿勢で宜しいのでございますが手は圖にありますやうに少々伸ばしまして、前に置いて歩くのでございます。 この辺は30年後の「裏千家茶の湯」と変わらない。 違うのは: 尤も御婦人も最早五十歳近い方になりますると、男子の姿勢と同じことで…