2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

12月の展覧会

秋展示そろそろ終了。 いろいろあって行けてないので、なんとか関東のだけでも回収したいところ。 東京近郊 期間 タイトル 備考 三井記念美術館 12/11-1/24 雪と月と花 出光美術館 -12/21 仁清・乾山と京の工芸 畠山記念館 -12/14 大名茶人 松平不昧の数寄 …

高谷宗範傳19 茶道は分限を本位とす

同じく宗範昭和五年の講演から。 茶道は其人の分限に安んじ足るを知るを以て處世の標準と為す、故に驕奢は固より之を禁じ吝嗇も亦之を戒む、貴賎貧富各其身分に應じ生活交際の中正を守らしむ是れ茶道の主眼なり、 (略) 茶道は其人の身分を本位とす、故に富貴…

高谷宗範傳18 茶道経国

宗範昭和五年の講演から。 謹んで惟るに日本は神の國なり、 我等臣民は神の子孫なり、 故に神の道を行ふことは我等國民の義務なり、 神とは即ち、天皇陛下なり、 神道は即ち皇道なり、 然れば歴代列聖の詔勅は即ち惟神の道なり、 殊に教育勅語を以て國民の遵…

高谷宗範傳17 山荘流

遠州流の奥儀を究め、更に諸流の研究に専念された先生は、現行の茶道が利休以來の舊式を墨守してゐるだけではなく、中にはその皮相を模して精神に遠ざかつたものも少なく、いづれにしても今日の時代とは相當に距離を有した点もあり、随つてこれを百年、二百…

高谷宗範傳16 遠州会

宗範と箒庵の議論から、ちょっと時代は戻る。 扨て先生は、斯くの如く茶道に對しては、實に眞劍であり、嚴粛であつた結果、仮りに茶席を設けて賓客を招くにしても、亭主自らが茶筅を振らぬのみか、飾付けから懐石の配膳に至るまで、出入りの道具屋、若くは知…

「おらが茶の湯」の位置付け

日本の茶書2の解説にこうある。 箒庵がこの書において「茶の湯は趣味なり」と喝破したことは、長く茶の湯を精神修養の具とみなしてきた常識を一新する自由な見方であった。 明文化したのが偉い。というのは認める。しかし、明文化したかどうかは別として、箒…

高谷宗範傳15 結末

んで、宗範と箒庵の議論はどうなったか?茶道月報の該当部分を追っかけられないので、実は私は良く判っていない。 日本の茶書2の解説で、 この「おらが茶の湯」は、発表されるや猛烈な反撥を受けた。 ことに文中に批判された高谷宗範は反論を雑誌に寄せ、た…

高谷宗範傳14 論戦

箒庵に対する宗範のリアクションは、以下の様に出版されている。「高谷宗範高橋箒庵両先生茶道論戦公開状」 http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1136337まず序文。 初め余は先生の論文を讀み、近頃光榮としえ雀躍欣喜せり、 何となれは、箒庵先生は、兼…

おらが茶の湯

高橋箒庵/茶道月報掲載/1932年。茶道全集日本の茶書2*1にも収録されている。 おらが茶の湯を始めたのは、三十二歳の時で、 と、自己紹介から始まる。爺ぃの昔話かな?と思いながら数ページ読むと、突然に様相が変わる。 近頃世間には茶の湯と云ふ事に馬鹿々…

高谷宗範傳13 戦闘開開始

宗範の、よく言えば真面目な、悪く言えば堅苦しい性格は、こんな感じだったらしい。 而して自身に會得の行かぬ事は、その流儀に在る友人先輩に就いてこれを糺し、或は多くの茶書によつて徹底的にこれを究めなければ惜かぬといふ、白熱的の態度で事に臨まれた…

高谷宗範傳12 喜寿

宗範喜寿の茶会の挨拶より。 さて目下の茶會の現状を見ますと、殆ど草庵式のみが流行し、書院式たる廣間の濃茶會は全然廢絶の姿です。 我が日本文化の發展が今日に於ては書院式茶會を復興し、且つ時勢に順應し、これを改善する必要のある事を咸じて近來此研…

高谷宗範傳11 松殿山荘聖賢堂

松殿山荘の建物に関しては(もちろん)以下に詳しい。http://www.shoudensansou.jp/institution/設立時の紹介は以下の通り: 庭内ニ池ヲ鑿リ其中心ニ蓬來山ヲ作リ其上ニ聖賢堂ヲ建築セリ 聖堂二ハ三聖ヲ祀レリ 即チ其中央ニ聖徳太子ノ木像ヲ安置シ其左右ニ孔子…

高谷宗範傳10 茶道の本旨

今その當時先生の制定された松殿山荘茶道會の茶道の本旨および茶道會設立の目的、趣意、役員並に寄付行為等を示せば左の通りである。 財団法人松殿山荘茶道会の為に宗範が書いた趣意書。 茶道之本旨茶道之定義 一 茶道ハ、國民道徳ニ基キ禮義ヲ行ヒ、文雅風…

高谷宗範傳9 財団法人松殿山荘茶道會

宗範は、自分の茶道道場を設立すべく、宇治木幡に十万坪の土地を購入した。 先生は斯うして、多年の宿望を果たすべき好適の治を手に入れた處から、餘生を全く此茶道場建設に捧げるべく、大正八年一月先づ多年本業とされた辯護士の職を廢すると倶に、各會社、…

高谷宗範傳8 武士道

宗範晩年の自論より。 明治維新の壮圖は京都が策源地なり、然れば昭和維新も亦京都を以て策源地と為すべきなり、 此故に余は京都府下に於て此地を卜し、此道場を開き、是に於て昭和維新の基礎を築き、天下公衆に向つて大に茶道の精神を發揮宣傳せんと欲す。 …

高谷宗範傳7 浪花風流十八會

明治三十五年、大阪の数寄者により浪花風流十八會が開催される。メンバーは以下の通り。 山中吉郎兵衛 松本雙軒 村山香雪 田村友松 田中特福 藤田芦庵 嘉納鶴堂 住友春翠 高谷桂堂(宗範) 西村滴翠 豊田聴雪 阪上拾翠 磯野迎春 芝川得齋 嘉納玉泉亭 上野有竹 …

高谷宗範傳6 火を入れる

松方公が嘉納両家にたびたび訪問された時の逸話。 當時嘉納氏は煎茶にも多くの趣味を有つて居られた時代とて、煎抹の二席を設け、山中輿七氏を煎茶席係りとして道具の飾付けを行はせた、 茶道具屋に煎茶席の飾り付けを行わせたわけですな。 先生は例のキツチ…

高谷宗範傳5 遠州流

その頃大阪江戸堀筋違橋西詰南入つた所に青木習々齋宗鳳の流れを汲んで、遠州流の茶を教へて居た貯月庵平井治郎右衛門と呼ぶ茶家があつたので先生は同僚であつた座光寺糾氏外二三の人と倶に此茶家へ入門して点茶の技を修め、後には日曜會といふを組織し、各…

高谷宗範傳4 お茶はじめ

明治二十五年二月二十七日従六位に陞り、同年十一月二十日勅令によつて高等官五等に叙した、同二十六年四月二十九日本官を辞すると同時に、永き官吏生活を廢め、同年五月一日東京地方裁判所検事局に於て辯護士名簿に登録して辯護士となり、居を大阪に移され…

高谷宗範傳3 高谷龍洲翁

宗範の父、高谷龍洲が結構面白いので茶の湯ブログとしてはちょっと脱線する。 先生の父君高谷龍洲翁は、豊前中津の藩士で(略) 又龍洲翁は、明治文化の先覺者福澤諭吉翁の母堂とは、再従兄弟の間柄であつた、随つて福澤君に對しては、「諭吉々々」と呼び捨て…

高谷宗範傳2 戦国武将と茶

昨日の緒言の続き。 織田信長、豊臣秀吉等は、斯道を以つて戦國に育つた、武辨一点張りの粗暴なる武人に儀禮を教へ、茶室内に於ける耽美的生活によつて、その魂に一種の潤ひを含ませ、心身を養ひ、趣味の向上を圖ると倶に、和敬清寂を本として天地中和の氣を…

高谷宗範傳

渡邊虹衣編/松殿山荘茶道會/1935年。割と四角四面な人柄で高橋箒庵と対立した茶人の追悼本。緒言より: 人間養生の仙藥、延齢の妙術として藥用に起つた服茶が、足利時代に入つて儀禮の用となり、更に徳川期に入つては趣味的に堕し、今日に臻つて尚その陋習に…

茶事談9 長次郎七種

本書には長次郎七種に関する記述がある。 東陽坊 大黒 小黒 三碗ハ黒盞 臨済 早舟 木守 検校 四碗ハ赤盞 右七品ハ本朝茶盞七種ノ名物トス宗易長次郎ニ命シテ造ル このラインナップも一般的ではないのだけれど、問題は、ここからである。 長次郎宗易ノ命ヲ受…

茶事談8 本朝茶事相承之圖

よくある茶家系譜であるが、もちろん?突っ込みドコロ満載である。 義政公 (略) 東山東求堂ニ居和漢雅器ヲ集メ金銀ヲ以テ諸具ヲ飾ル洛東銀閣寺是ナリ (略) 東求堂だと和漢雅器を集めるには狭すぎるのではなかろうか? あと、銀閣寺が金箔あるいは銀箔貼りと…

茶事談7 本朝茶祖珠光傳 愚痴

オヨソ近代萬方茶ノ會ヲコノミテ諸流ヲワカチソノ流々ヲ論シタヾ賓主應對モナクタヾウツハモノヽ善悪アルヒハアタイノ高下ヲキソヒ容貌動作ヲ論ジ衆陣茶室ニ群居シテ終日淫喋戯慢スルバカリナリ カクノゴトクニテハ日々ニ茶會ヲモヨホスト雖又何ノ益アランヤ…

茶事談6 本朝茶祖珠光傳 禅と礼

世人茶ノ會ハ佛家ヨリ出シトイヒ或ハ禅法ヲ不學茶事ナシ難シナドヽ云ヘリ 考ルニ初メ傳教弘法茶ヲ漢土ヨリ取リ帰リ栄西明恵茶ノ製法ヲ弘メ後ニ珠光出テ茶事備リ宗悟宗陳禅宗ニテ紹鴎宗易モ亦禅宗ヲ尊ミ宗易ワケテ禅學ヲ好テ大徳寺ノ聚光院古渓和尚ノ弟子トナ…

茶事談5 本朝茶祖珠光傳 正統

台子の伝授について 珠光門人多キ中ニ篠道耳臺子ノ式法ヲ傳受ス 道耳ヨリ十四屋宗悟ニ傳受シ宗悟ヨリ紹鴎ニ傳受シ紹鴎又宗易ガ茶事ニ器量アルコトヲ知リテ宗易ニ傳受ス 宗易ニ至テ太閣秀吉公ノ命ニヨリ茶會ノ極意ハ一子相傳トナル 宗易嫡男眠翁紹安蹇病ナル…

茶事談4 本朝茶祖珠光傳 台子

珠光をめぐる茶の広がり。 此時丹州ヨリ上林氏出テ五畿内ノ地ヲ撰ンデ茶ヲ植試ミルニ何処モ土地茶二不應茶ノ味ヒヨロシカラズ 城州久世郡ノ地茶ニ應シテ味ハヒ栂尾ニヲトラズ故ニ茶園ヲ宇治ノ邑ニ定ム 上林氏は近畿のいろんな所で茶を植えてテストしまくった…

茶事談3 本朝茶祖珠光傳 眠い

珠光と茶の出会い。 珠光禅宗ニ歸シテ書ヲ読ミ座禅スルニ睡眠スル事甚シ珠光常二コレヲナゲキ或時名醫何某ニ問テ曰ク 余壮年ノ時ヨリ示す釋門ニ入トとは雖師ノ教命ニ背キ漂泊ノ身トナリ今當寺ニ入テ法義ヲ學ブ然レ共座禅ノ時眠ヲ催スコト甚シ公ハ名醫ノ名高…