2011-08-01から1ヶ月間の記事一覧

泥中庵今昔陶話3 贋物と古物商の話

蔵六は鑑定家として一定の評価があったらしく、しかも筆を曲げないので古物商と結構敵対関係にあった様だ。 二十年前にある古陶器あの即賣會が京都にあつて、中等以下の古物商が多勢組合をつくつての催しだといふので、私は多くの狂陶家と同行して見に行つた…

泥中庵今昔陶話2 朝鮮旅の話

蔵六は高麗茶碗の研究の為に朝鮮半島を旅したらしいのだが、この本にはいとも無造作にその様子が記録されている。 私が朝鮮を旅したのはおかしな動機からであつて、その二年程前病氣にかかり、それは治つたがどうも體が冷えていけない。京都にゐてはつひ家の…

泥中庵今昔陶話

眞清水蔵六/學藝書院/1936年。二代目真清水蔵六が雑誌「茶わん」に掲載したエッセイが中心。昭和10年に出版した本だが、昭和11年の蔵六の死により、追悼文付で再販されたものか。窯跡話、土質話、偽物鑑定話が多い。技術的な話が素人には判りづらかったりも…

出家

人生、何もかもが嫌になる事がある。 憎悪や貧困なんかのマイナスの事象が多くて困る、というのが嫌なのは当然だが、愛情が多過ぎて困るとか、お金儲けが多過ぎて困るとかが嫌になる事だってあるだろう。 しかし、人は「あらゆる物と縁を切る」事は本来不可…

台子

台子と風炉は唐から伝来したものだという。…でも、本国ではどう使っていたのだろう? 中国は基本、椅子とテーブルの生活である。椅子とテーブルの生活というのは、座面の高さに物を置かないという事でもある。物は床に置くか、テーブルの上に置くはず。 風炉…

数寄です!壱

山下和美/集英社/2011年。 漫画家、山下和美が数寄屋を建てるまでをレポートするエッセイマンガ…の一巻。 …ということは、建てる数寄屋は経費で落ちる、ということじゃろうか?ま、それはさておき。 懐かしいよな、山下和美。モーニングの黄金期を支えた一人…

直伝和の極意「茶の湯武者小路千家朝茶涼しい時間を有効に」最終回

3年程前、高松に行ったことがある。http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20071209高松は存外茶味のない町、という印象だった。栗林公園は前を通り過ぎただけ。 …こんな綺麗なトコなら入ればよかったな。あ、高松着の時間にはもう閉まってたんだっけ。 そんな…

茶の湯 作法とたて方6 席入の客の心得

■身だしなみ 客に呼ばれていちばん気になるのは服装のことです。 (中略) ただ茶の湯の場合、特に簡素でありたいために、洋装のときでもはなやかな腕輪やイヤリングはつけない習慣になっています。 (後略) ■持参する品 (中略) 替え足袋その他 和服の場合、か…

茶の湯 作法とたて方5 茶杓

茶杓への茶人の執心について。 なぜ、これほどまでに茶杓に凝らねばならなかったのでしょうか。 前にも述べましたように、茶の湯の眼目である抹茶を客の為にすくうという行為が、まさに生命の滴をすくうのにも似た高度な営みで、亭主の全身全霊が茶杓に集中…

茶の湯 作法とたて方4 一碗の茶をめぐる人間関係の葛藤

“一碗の茶をめぐる人間関係の葛藤”の章より。 一次元、二次元の話をご存じでしょう。 (中略) 人間関係でも、世界の構造でも、宇宙の原理でも、みなこの一次元を基本としています。 茶の湯の亭主と客の関係も、ややこれに似ています。 さらに第三の点を考えて…

茶の湯 作法とたて方3 茶室と水屋とダイニング・キッチン

現代の住いには、マンションでも団地でも一般の住宅でも、ダイニングキッチンやリビングキッチンの様式がほとんどとり入れられ、キッチン(台所)をほかの居間や食事をする部屋と切り離して考えていたそれまでの形と多いにへだっております。 茶室と水屋という…

茶の湯 作法とたて方2 茶の湯の動きはなぜ美しいか

お茶の点て方について、 茶の湯というと、かたくるしい、型式ばったお作法と考えている人が多い様です。 (中略) けれども、その作法や動きには、どれ一つ型式的なものはなく、一つ一つが非常に合理的にできているのです。 こういう合理論というのは結構聞く…

茶の湯 作法とたて方

松小路宏之/金園社/1976年。昭和50年代の茶の湯の入門書。「はじめに」にこうある。 そうでなければ何百年もくりかえされてきたお点前の単なる踏襲にすぎなくなります。なぜ型に従ってお稽古するのか、そしてそれが現代の生活とどういうふうにかかわりあうの…

懐中

男の着物と女の着物。衣紋だとか、おはしょりだとか、身八ツ口だとか、袂と身頃の関係とかいろいろ違いはあるけれど、茶の湯的に意味のある違いは、帯の位置だけだと思う。 茶の湯ではいろいろな物を懐中する。帛紗に出帛紗、懐紙。点前の状況では仕覆を懐中…

直伝 和の極意「茶の湯 武者小路千家 朝茶 涼しい時間を有効に」

第3回は濃茶。と続き薄茶。つーか、茶事の終わりまで。 あ、1回目の再放送は結局録画をミスりました…。 ああ、お茶をすくうと茶杓はあのぐらいお茶が付いちゃうよね、とか。 茶碗持ったまま懐紙で拭く男の作法はスリリングそうだ、とか。 茶碗の拝見の時に懐…

灰匙に対するある試み

灰匙。小さい灰匙よりも大きい灰匙の方が、凸凹が無い綺麗な面ができる。 じゃぁすっごくでっかい灰匙を作ればどうだろうか? …作ってみた。プラ板で。使いかたは、引くように使うのではなく、押しつける。 するとこんな風に形ができる。 二文字押切なら、こ…

松花堂昭乗

佐藤虎雄/河原書店/1938年。松花堂昭乗の伝記。 この本以外に松花堂昭乗の伝記なんてあるんかいな?的な本ですな。 松花堂昭乗は幼少から近衛信尹に仕え、見出され、石清水八幡の瀧本坊に入る。その後、将軍家書道師範になったりと微妙に波乱の人生を歩み、…

香雪齋蔵品展観図録

昭和9年の藤田家の売り立ての目録である。A4よりちょっとでっかくて厚さ55mm。ずしりと重い、 分量の半分、前半部分は墨跡/絵賛/絵。その中でちょっと面白いのは織田道八「指月布袋繪賛」。有楽斎の長男、“猪熊教利の逃亡を助けた”“戦闘拒否”など、親譲り…

武者の小路 第3年1号

古本市で戦前の武者小路千家の機関紙「武者の小路」を入手した。…“の”が入っているんだネ。昭和13年の正月号である。 渡邊虹衣“時局と茶道に就て”: 茶道即ち茶は閑人の閑作業であると見て居られる結果、今日の如き非常時局に際しましては全く無用の長物であ…

直伝 和の極意「茶の湯 武者小路千家 朝茶 涼しい時間を有効に」 第2回

んもー、最近の和の極意は1テーマが2ヶ月も続いたり、それなのに次テーマの予告がWEBになかなか出なかったりと、案内悪いので見過ごしちゃったよ。しかも1回目は高校野球で再放送無しだしな。関西人の私はトロン・ミラン事件以来、高校野球は敵だとおもうと…

もしかするとマイワイフは読まん方がいいかもしれんエントリ

僕の愛する君へ。君と結婚してからもうすぐ20年が経とうとしているね。 結婚記念日も、もうそんなに遠くない。結婚記念日なんて、ただ単に役所へ届け出をした日。なんて思ってほとんど祝ったことがない僕達だけど、たまにはそういうのもいいね、とか思ってた…

武家文化と同朋衆―生活文化史論

村井康彦/三一書房/1991年。同朋衆。千家も、自らの起源をそこに置いている職掌。その同朋衆に関し、村井先生が述べた渾身の一作。 …だと思うんだが。 阿弥号は時衆の名乗りである。 同朋衆は全て阿弥を名乗っている。 同朋衆は時衆かというとそういう訳では…

ひびの修理

以前作った細水指。使っていると結構水漏れする事に気付いた。買った時点で金継ぎ修理済みの品なのだが、ひびの部分から水漏れしていた。 完全に割れたものを継いだ場合、接着剤の麦漆と表面処理の錆漆で水漏れする様なスペースは無くなるのだが、ひび程度だ…

相場2011

以前、自分に買えそうな茶道具の相場感を書いた。http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20080227それから4年。実際どうだったかをふりかえってみた。 道具 価格 備考 茶碗 七万 来歴不明。でも意外といける伊羅保 棗 自作 結局一個も買ってない 茶入 十二万 来…

茶人一休

伝承では、珠光は一休の所へ参禅し、眠かったので茶を授かった事になっている。禅が眠かったから…というきっかけは少々どうか、と思うが、それはともかくとして、一休が茶を珠光に教えた、というのであれば、茶の湯の始祖は珠光ではなく、一休に遡れないだろ…

實用女子手紙の枝折6 番外2:親子丼

實用女子手紙の枝折、という本には、いろんな料理レシピも載っている。ハイカラな洋食を採り入れようという動きとかが読み取れて面白い。ただ、スープ類に香草類が使われていない、シチューに酒が使われていないなど時代を感じたりもする。 ◯普通のサラダ先…

實用女子手紙の枝折5 番外1:手紙

實用女子手紙の枝折、という本は、本来は手紙の文例集である。 茶の湯の手紙についてどう書いてあるかな?と思い探してみた。残念ながら茶の湯に招く文は入っていなかった。でも、当時の手紙のレベル感は判ったよ。 ◎月觀に招く文荒たる庭の七草秋知り顔に咲…

實用女子手紙の枝折4 蓋置

實用女子手紙の枝折、に書かれている「茶の湯の枝折」は、かなりおおらかな人が書いてるのかもしれない。 帛紗 (略) 併し稽古中は此も亦た半ケチーフの類で十分なんである 茶の湯の時間 (略) なれど此は正式に茶の湯茶會を開きます時のことを云ふので普通に…

實用女子手紙の枝折3 茶を點る時の心得

はしがきにて於て述べた通り茶の湯は厳格なる禮式の一である。其故に茶を點る時には第一に居住が大切である。 先づ姿勢正しく座して顔をしかめたり無暗に話をしたり頭を振たり臂を張たり腹を突き出したり肩を怒らしたり身體をゆがめたり踵で居所を前の方へ押…

實用女子手紙の枝折2 道具収集

道具収集について。 年若き乙女方の茶を學ぶに其の業の十分達せぬ中に何や彼やらと色々のよき器物を集むることに熱中する傾きが得て有り勝ちである。 ぬぅ。こう言ってはなんですが、女性と言うのは(あくまで男性に比してですが)茶の湯道具に耽溺するよりも…