2013-09-01から1ヶ月間の記事一覧

茶漉しの工夫

前に、お茶は漉せば漉すだけ風味が消えるので、何度も漉しちゃ駄目、という話を書いた。 http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20130720 でも全量漉しちゃうと、使いきるまでにダマに戻っちゃう。 かといって毎回使う分だけ漉すのはめんどくさい。 だから適量…

茶人の名書簡4 織田有楽自筆書状

本書には 三好釣閑斎(笑岩)の借金の調停文書 松永久秀の罪人処罰の進言 織田信長の激励状 なんかの変な文が満載である。おかげで織田有楽斎の 尚々口切之時分ニ必々上洛待入候以上 遠路芳札殊更うなきのすし一桶贈給令祝着候 其元隙次第上洛待入候 猶面上ニ…

茶人の名書簡3 今井宗薫自筆書置

紹鴎や宗達、宗及、宗久の書簡も紹介されているが、文句無く茶の湯にふさわしいからパス(ヲイ)。ここで今井宗薫の書置を。 一 御知行之事ハ 公儀次第候度々御奉公申上候間唯今ハ定而可被下候 此儀ニハ平左衛門唯今之覺悟にてハ被為聞届候共可被召上候間左様…

茶人の名書簡2 足利義政書状

世上之儀万不應成敗候之間令退屈ふと思たち候 今の時分定而疎略之様可被思食候へとも何共れうけんに不及候まゝ此分候 無緩怠心底者可有上察候 目出天下静謐之念願候 今ちと心なかく被相待候へく候 此旨自然之時者可被得其心候也 謹言 三月七日 (花押)(義政) …

茶人の名書簡

桑田忠親/東京堂出版/1970年。茶人の書簡を紹介するというやや意味が判らない書物。 どう判らないか、を逆に検討していくつもり。 まず一番最初が佐々木導誉。 なお/\まいねんちきやう候へく候 あふみの国ふくなかの年貢のうち百石まいらせ候御ちきやう候…

抹茶Q's

一保堂が、抹茶の普及の為に、謎グッズを作っている。http://shop.ippodo-tea.co.jp/kyoto/shop/goods/index.html?ggcd=902016&cid=utensils片口で点てて、他の茶碗に注いで飲んでくれ、というグッズの様だ。以下の四つの問題点がある。 めんどくささが減ら…

楢柴写し

楢柴を復刻している茶道具屋さんがある。http://www.sadogu.co.jp/sadouguhanbai/narasibatyaire.html宗湛日記の図を忠実に再現しているのだと思う。 でも、「∩∩」ってなっている釉切れの表現が露骨過ぎやしないだろうか?「ヘウケモノ也」のゆたかな感受性…

萬寶全書七 和漢茶入2 失われた茶入

1694年の本書には1657年の明暦の大火で失われた茶入も集録されている。投頭巾 楢柴 楢柴は宗湛日記にも絵がある。おもしろいのは萬寶全書の方は、宗湛が右側になたれがある、と思っていたそのなたれが正面にされている事だ。 宗湛日記の絵と、本書の絵、どち…

陶ism in KASAMA

9/21,22,23を中心とした笠間の陶芸店合同イベント。http://touism.net/touism_kasama/pg223.html大規模なイベントではないが、陶芸市系では軽視されがちな「茶道具展」があるのがうれしい。 目当ては二階堂明弘さんの作品だったのだけど、ちょっとお高めであ…

萬寶全書七 和漢茶入

1694年。元禄七年に出版された百科事典の第七巻の、和漢茶入の下巻。 茶入の図が入っている。写真がない当時としては、こういう図でしか憧れの茶入を知ることができなかったに違いない。新田肩衝と初花肩衝 http://dramatic-history.com/art/2007/culture/to…

京都の名探偵は目川

調子にのって昨日の続きを書くぜ。 お茶が見立て殺人みたいなものなら、名探偵には客っぷりを学べる筈。ということで、二人の名探偵に、客の心得を見せて頂こう。 まず客として最悪なのはシャーロックホームズ。なにせ会った瞬間に「あなたはパプア・ニュー…

o・mo・te・na・si

「おもてなし」について。時期が離れると恥ずかしいので早めにね。 日本の「おもてなし」の心は、主に商売に於ける顧客サービス至上主義にあって、チップ制度が廃れた状態でもサービスがインクルードになっているという暗黙の了解をその基盤としている…とか…

茶道爐邊夜話33 利休好の日時計

茶の湯が流行するに連れて、茶祖利休が茶聖利休になり、リキユウと名の付くものは、なんでも彼でも利休が考案工夫したものゝやうに思ふ茶人がある。 明治から昭和に掛けての茶道史は、有力武家の貴ぶ遠州好みから脱却し、利休好みが再々発見されていく歴史で…

茶道爐邊夜話32 文人畫

昔の茶の湯には、文人畫を愛用し、墨蹟、歌切、色紙、懐紙、消息等と共に床にかけて居たが、近來文人畫を排斥し、抹茶に不適當であるとする風がある。 確かに文人画は「僕等のお茶」では使わない。 茶の湯の美術館で見る事もあるが、さほど感心もしない。か…

茶道爐邊夜話31 墨蹟の疑問

茶人は墨蹟を喜び珍重して床にかけて賞玩して居るが、古徳の筆蹟を見てその徳を偲ぶならば未だしも、其の書かれた意味を解して賞するとなれば、其所に疑問があるやうに思える。 墨蹟として珍重されて居るものに書かれて居る文字は大低、偈か公案で、その解釋…

茶道爐邊夜話30 成金と茶の湯

大名には大名として、公卿は公卿として、富豪は富豪としての禮儀もあり習慣あり教養を必要とするのは、古今東西共に通ずる處である。 従つて其の一でも缺けて居ると肩身の狭い思ひをせねばならない。 そして周圍からは成上り者だの、成金だのと批判される。 …

茶道爐邊夜話29 茶法の教授

茶の湯をめぐる雰囲気の判る一節。 何事に依らず、それが大衆化することは、其の本旨より遠ざかる一歩であるのは常に各方面に見られる現象であるが、茶道もこの例に漏れて居ないやうに感ぜられる。 然もそれが數百年の間に洗練はされて居るものゝ、幾分沈滯…

茶道爐邊夜話28 藝術としての手前の保存

能にしても歌舞伎にしても、長日月の間に洗練を重ねて此所迄來た、最早完璧の藝術であるから、それに上手位の人が手を加えたり、工夫するのは、結局改惡に終わる場合に多いのであるから、大いに愼しまねばならぬと思ふ。 能も歌舞伎も完成した伝統芸能なので…

茶道爐邊夜話27 本當の手前

(略) 茶の手前は長らくの間に洗練され、最も無駄の省略された動作であつて、何時かも能率を研究して居る心理學者が非常に譽めて居た等から考へても却々優れた手續である。 處がこれを目して徒らに手續が繁雑であると批難する人が相當多いのだから面白い。 茶…

茶道爐邊夜話26 流儀は獨善か

茶人の中には、自分の稽古して居る以外の流儀の人と交際しないとか、他流の好物や宗匠の書附のある道具は絶對に使はない人があるが、これは餘りに狭量ではあるまいか。 他流と交流すると、色々違いが見えて面白い。 だが、普通は交際の中心はどうしても自分…

茶道爐邊夜話25 茶事の時間

世の中が忙しくなるにつけ、内外共多事で、茶事を催すにも前後四時間に渉るのは苦痛で、何とか時間の短縮の方法はないものだろうか。 せめて二時間位になると、時々茶事を催して樂しめると云ふ話を盛んに聞くと、私は何時も、時外の茶事をやれば、其の目的は…

各服

各種記録から考えると、濃茶が廻し飲みになったのは、天正十年以降。それ以前のお茶は、各服点てだった筈だ。しかし、各服点てではあまりに時間がかかるのではなかろうか?例えば、松屋会記の天正以前の記録。「台子+釣釜」ブームの頃の客組でも相客5名とか…

茶道爐邊夜話24 濃茶の喫み廻し

濃茶の喫み廻し、いわゆる吸茶について。 偖、この濃茶の喫廻は、近代人は衛生上面白くないと云つて盛んに攻撃し、客組に結核や、梅毒のやうな傳染患者が居たならば如何するかと云ふが、それは茶事の實際を知らぬ。 昭和初期頃。いろんな茶人が「新しい茶道…

茶道爐邊夜話23 立禮

著者の立礼への考え。 泰西文明が輸入され、西洋風の椅子に依る生活樣式が採用され、實務を執るには、従来の座式は殆んどなくなり、家庭生活にも椅子の樣式が採り入れられ、應接間は多くこの式を用ひ、若い人は大低西洋風の住宅に日常生活を營むので、茶の湯…

茶道爐邊夜話22 躙口と婦人

躙口の起源に就いては、人のよく知る所であるから省略するが、 (中略) あの小さな入口から腰を屈めて席入りするのは、茶道では色々と理屈を付けて居るが (中略) 元來が戰國時代有勝の刺客を恐れ、武器を帯びて入席不可能な小さい入口を採用したといふのが正…

茶道爐邊夜話21 洋服で茶の湯

人或は、洋服では帛紗を如何に扱ふかと云ふやうな問題を出して得々として居るが、これは餘り誉めた見方ではない。 何となれば茶の湯の手前をするに従來からある洋服を其の儘使はうとするから、色々面倒な事が出來るのであつて、茶の湯の初期に於ける茶人即ち…

茶道爐邊夜話20 茶と禪

茶人がよく茶は禪から出たものであると自慢するが、そのやうな連中に限つて、禪の何物であるかの片鱗にさえ觸れて居ないのだから笑はせる。 茶が禪から出たが故に難有いならば茶道に精進するのを止めて、其の源流に入つた方が面倒もなく、効果的である。 (中…

茶道爐邊夜話19 道具組の苦心

茶事を催すには、唯漫然と釜を掛けることはなく、假へ常釜にしても、其の時期に依り、趣向のあるものである。 それが一期一會の茶事を催すとなれば、準備に相當頭を使ふので、其の中でも道具組は最も努力するものである。 ということで道具組について。 それ…

茶道爐邊夜話18 茶器の見立

見立てのお話。 使用目的があつて造られた道具を使ふ場合には取合せに注意すれば良いが、他の用途に當てる為めに造られた道具を茶道具として採用する。 即ち見立てゝ使ふのは、却々興味のあるもので、成功すれば本來の目的で造られたものに得られぬ味があり…

茶道爐邊夜話17 慣

點前は教えたのは駄目、何時とはなしに覺えたのが良いと云ふ意味の言葉を、昔或る宗匠から聞いたことがある。 (中略) つい最近、ある人の茶事に招かれて、同席した人々も主人も皆、子供の頃から席入を強要されて來た連中と來て居るので、勿論流儀は、千家の…