利休にたずねよ

山本兼一著。

利休にたずねよ

利休にたずねよ

美の求道者と権力者の対立。求道者は美に殉じ、権力者は敗北感をおぼえる。
こんなツキナミに陥りがちで、いまさら利休物はなかなか難しい。

んで気になっていた作家が利休物を書いたので読んでみた。

利休の切腹を軸に、その周辺から見た利休を時代を往還しながら語る。

愛多き利休の恋の物語。
完成した美を前にすると毀たずには自分の物にできない男の物語。

茶碗作りに苦心する長次郎とかはちょっと新鮮。そーだよなー。いくら後世にイカス茶碗を残しているからと言って、瓦職人がかるーくイカス茶碗を作れるようにはならんわな。

すごく取材して書いているのは判る。けど、利休の後妻が宗恩、という法名で呼ばれているのが気になる。ま、会話の中で呼ばれる、という事は巧妙に回避しているのだが。あと「五条で京焼でも」は利休の時代にどーだろーか。

しかしまー、やっぱどーしてもツキナミだし、構造的に散漫でもある。

たまには変化球が読みたいな。例えば、実は美に興味はなくて金と権力の亡者の利休とか。デッドボールでも構わない。金毛閣の利休像が歩きだし三成を踏み潰す様な話でもいいぜ。