三徳庵茶話 茶と人

田中仙翁/木耳社/1966年。

田舎の地主の息子が京へ登り、家族の「やめてー」の懇願もはねのけ茶を続け、財産を食い潰してしまう物語、の様な感じのエッセー集。

やっぱ老茶人の話は拝聴する価値があるな、とこういう本を読むと思う。
若干過激な所はあるけど。

ある時、家元で破門せよとの協議中と聞いて、裏千家の円能斎から皆伝を受けていた私は、家元へゆき、「皆伝の免状を返済して自ら破門を願うし、その代りに何でも茶の事を自由に書きたいから……」と申し入れた。円能斎も非常に困られて、「破門の事はまあまぁ」と言われた。

やっぱ、すんげぇおっさんである。

佐々木三味の「茶の道五十年」と共通の茶人も出ていて、扱いが違って面白い。今西行さんの評価の違いにくらくらしそうである。

もちろん仙翁さんなので、曲尺割の話もたっぷり。でも「茶道全集 特殊研究篇」を読んでないと判りづらい気がする。

あと

  1. 燈心亭の由来は天井の素材ではない。
  2. 密庵席の密庵床と本床は逆
  3. 龍安寺の石庭が不思議な空間に思えるのは当初の配置でないせい。

などなどいろんな説も載っている。

長男がいま生きていれば四十才くらいになっている筈であるが、思いがけず、孫の博民が私の後継者として、茶道学会を相続する事になった。

うーん、秘伝開放、とか言ってるけど、良く考えたら家元制否定、とは言ってないもんな、茶道学会。