茶之湯獨稽古

脇田季吉/藍外堂*1/1883年。
明治16年に初版の出た茶道書である。

裏千家茶の湯」みたいな本だと思い買ったがちょっと違う感じ。

61ページの小冊子なので、お点前の練習本なのかな、とか思うと、むしろいろんな事つめこみまくりなのでびっくりする。

序文とか除くと内容と分量の関係はこんな感じ。

茶室と茶庭とそこに植える木 18ページ
懐石の出し方 5ページ
亭主と客の心得 7ページ
薄茶の立て方 9ページ
炭点前 7ページ
濃茶の立て方 9ページ

茶室と茶庭の知識が3割ってのはちょっと不思議な構成だ。

お点前の方は帛紗の畳み方、みたいな割稽古パートが無いのであまり実用的ではない。


初版の出た明治16年、というのは私の認識ではまだ茶道冬の時代だと思っていたのだが、序文にこうある。

明治十三四年の頃に至政府も頻りと我か古國の典を保存し古器物の貴重を愛せらるゝより終に茶道も再び行はれしは此道の僥倖とやいふべし

圓能斎が家督を継いだのが明治23年。その後東京で貧乏生活をしていた筈。
茶道が復興して来たのは明治20年代後半、ぐらいのイメージだったのだが。

「會席の事」より:

近年はあまりに華美奢の沙汰と成ゆきて却つて禪味の本体を失ひ甚だおもしろからず

でも本当は明治10年代前半で茶道は復興していたんだろうか?
しかも爛熟していた?

ちょっと意外だ。


ちなみに脇田季吉さん、人力車取締規則、なんてのも書いている。
http://porta.ndl.go.jp/service/servlet/Result_Detail?meta_item_no=I000009325&meta_repository_no=R000000008

あと大日本改進党員実伝とか。何者なんじゃろうか?

*1:画家奥村土牛の実家