庸軒流の茶事

伊藤庸庵/庸軒會/1971年。非売品。…完全に身内向けですな。

タイトル通り庸軒流のお茶事の本。この頃は横浜に庸軒會というのがあったのね。
茶道望月集を再編集し、亭主側客側に作法を分離したバージョンも載っていて、とってもお得感。


庸軒流の茶事は読むかぎり、なんかとっぴな事はやってないっぽい。
但し、異常に細かく手順が書いてあってびっくりする。

詰客が汲出し茶碗に湯を入れ、茶托にのせて運び、先ず正客からすすめます。
正客は先ず、茶托から茶碗だけを取って膝前に置きます。
詰客は茶托を持って再び瓶掛の前に戻り、次の茶碗と再び茶托にのせて、二客に差し上げます。
最後に詰客は自分の頂く分を自身で湯を汲み、かくて正客以下揃って必ず同時に頂くのであります。

白湯の頂き方からしてこういう記述粒度。おかげでいろいろ参考になるが他にも面白い事が結構書いてある。

例えば「個々の料理と器物の取合せ」の項。

(前略)青磁の鉢に青菜の浸し物などは、いづれも色彩の上から見れば落第であります。

これだけなら素人の私でも想像つくが、続く文章では

(前略)質の上の対照とか調和はやゝむずかしくなります。たとへば澤庵を白磁とか、

器と料理の調和。更に器と器の調和まで語っていて、とても参考になった。

…ちょっと佐々木三味の「お茶事」を参考にして書いてあるような気がしなくもないのは内緒な。