茶道ふと思ふ記

千宗守/晃文社/1946年。

出版年は戦後だが、原稿は戦前のもの。著者は愈好斎か。親子代々おんなじ名前襲名されるので判定大変だから、せめて何代とか書いてくんないものか。

いわゆる茶道エッセイ。

和といふものはそのやうに大切なものでありますが、兎角それが過ぎれば甚だ面白くない。和らぎすぎる。
(中略)
さういう風に流れずという事に力を入れすぎると敬がすぎてくる。すると辛辣なものになつて來て面白くない。

和敬の間のバランス感に関して書いたものははじめて読んだ。


愈好斎に関しては、確か小林逸翁が「佐々木三味さんと栗田添星さんに新茶道作らせたいなー。千宗守さんに監修させて」みたいな事を言っていた。つまりかなり革新的な人物とみていたのではなかろうか。

でも、実際に本を読んで感じるのは、愈好斎の安定した人格と学識。

面白い常識のある知識人って感じがする。…常識のある、というダケで革新的なら、それはそうかもしれないが。

あと気になった事。

懐石では昔から箸を採つて第一に口に入れるのは焚きたての飯であつて、口の菜かに何等の味ひを持たない時に飯を食つてこそあの何の味ひも付けてない米の眞の味ひを知ることが出來る。

武者小路千家は飯先派なんだね。

官休庵の舊地も隣の薩摩屋敷の兵隊が練兵をやる練兵場となってゐたが、明治十四年になつて一指斎は苦心計營の結果、再び舊地に縄張りをして官休庵の稽古場と半寶庵を再興したのであつた。

どうも茶道は明治十年代前半に復興していた様な気がする。

なんとなく明治二十年代後半まで復興していなかった感が有るのは、裏千家が困窮していた事、箒庵がデビューしていなかった為の印象ではなかろうか?