茶の湯・心と形
大森宗晋/白川書院/1978年。
大森さんは玉川遠州流のお家元。
南方録に関する部分はかなりお題目っぽいが、他は結構面白かった。
大森さん、濃茶を廻し呑みするのは、本来非礼であると語る。
それが許されるのは気心の知れた人達の間だからである。なので、大寄せの濃茶では廻し呑みはイカン、と。
そこでお濃茶を出すことになったのであるが、先に述べた様に連服の濃茶には、どうもこだわりがあった。亦一服点では芸がなさすぎると云うので、何とかして「礼」に適ったお濃茶の出し方を考えていたのである。
一計を案じたと云うのは他でもない、我が流には簡単な前茶法が傳わっているので、これを応用して、数人分のお濃茶を主茶碗(実際には片口茶碗を用いた)でねり、これを小茶碗につぎ分けて客に供する様にしたのである。
つまり客前で大量に点てて小茶碗につぎ、各服点の様にするわけですな。しかし、実際にはイマイチだったとか。
それは、通常のお濃茶の点前に更に五個の小茶碗の扱いが加わるわけであり、かつ我が流はお点前が大変丁寧であるため、なお更、長時間を要した。
確かに一点前が一時間余にも及んだと記憶している。その節は、種々御批判を頂いたものである。
結局、大寄せで濃茶はしない、という事に決めたそうな。
でも家元が創意工夫しているのは好感が持てるよな。
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