茶道霧海抄

戸田勝久/講談社/1980年。

裏千家戸田さんのエッセイ集。…というのかな。


戸田さんの、伊藤左千夫の句に関する考察"伊藤左千夫茶の湯"がちょっと面白かった。

伊藤左千夫に関しては、ちょこっと↓でも触れた事がある。
http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20090424
茶狂いの俳人である。

左千夫が、初めて子規に会した。明治三十三年には左千夫が「茶」を詠んだ三首がある。

 冬の日のあかつき起きに貰ひたる山茶花いけて茶をたてにけり
 いにしへの竹の林にあそびけむ人の画掛けて茶をのみにけり
 いにしへの人が焼きけむ楽焼の手づくね茶碗色古りにけり

ここには子規の添削があることが、「左千夫歌集合評」で、土屋文明によって明らかにされている。左千夫が自身で作った、もとの歌は

 おもしろき山茶花もらひ其花を床にさしいれて茶をたてにけり
 庭を清め座敷を払ひ床の間に掛物掛けて茶を飲みにけり
 飲みをはり僧問ひけらく此茶わにあなおもしろ何とふやきぞ

子規には茶の理解は、よほど薄く、技法上の難点はあっても、左千夫には、素直に茶を造形化しようとした跡が見えていよう。

子規の技巧が左千夫の句を茶から離してしまった例示である。

山茶花が禁花なのにおもしろさで貰って入れたのがいいんじゃん」「いにしへの…じゃ絵空事じゃん」て事らしい。駄目じゃん、子規。


"式森羅*1月庵" は茶人 式森蝸牛/行司式森伊之助について。彼に関してはある程度の資料もなかったので、それなりに助かる。


あとはねー、"村田珠光"は謎の歴史小説。茶人の書いた茶人の小説ってちょっと気恥ずかしい。


"戸田茂睡の系族"とか"松坂の長井鼎玄斎"は自分の先祖や師匠の先祖筋に関する研究。この辺になるとあんまりにも私的な内容。


結論としては「誰に読ませたかったのかなー?これ…」って感じかな。

*1:本当は草冠に羅