茶狂い
和泉草「別儀ノ発端」より、筆屋の逸話。
一、京誓願寺ノ北ニ筆屋有テ侘數寄也。
有時珠光松本志野道庭此四人招請シテ、茶ヲ立シ也。
此茶勝レテ吉、イカニト問フ。筆屋別儀ニシタルト云。子細ヲ問フ。
朱ノ盤ノ上ニ無上一袋ヲ移シ、細箸ヲ以テ能ク茶ヲ撰ンデ、今日ノ御馳走ニ如斯ト云。
極上茶である「無上」を更にハンドピックしたものが「別儀」と呼ばれる茶だった、という逸話である。め、めんどくさ。
これに続く一文は以下の通り。
此筆屋茶会ノ日ニハ、毎度掃除終テ、布幕ヲ水ニシタシ、夫婦引張リ家ノ中ヲ走廻リテ、急ノ目ニ見エヌミヂンヲ取ル也。
「昔の人は見えない埃を取るために濡れた布を振り回した」の元ネタはこれでしたか。
この筆屋さんを「茶クルイ」と呼ばれた様である。
…ここまでできるか、というと自信はないし、いくらおもてなしでもちょっとやりすぎな気もする。
でも、ここまでやれれば悔いはないであろうなぁ、と思う。気持ちくらいは目指したい境地ではある。