鈍翁 益田孝

白崎秀雄/新潮社/1981年。

1998年の中公文庫版もあるらしいが古本屋でよく見るのはハードカバー版。


これはすごい伝記である。

茶人鈍翁というより、益田孝の人生を、益田孝の人生というより、日本史を切り取った一冊、という感じだ。


茶のエピソードはもちろん豊富に入っている。これ一冊有れば近代数寄者のお茶エピソードは網羅できそうなくらいである。


益田孝の人生としては、侍の子としての少年時代から、英語力で勝負していた青年時代、本人の蓄妾が生んだ事とは言え、いまひとつ不幸な家庭生活。そして老後。


そして三井物産の暗躍した数々の出来事。

この本を読むと、益田は三井の大番頭というより、三井家を傀儡に日本を支配したフィクサーであった事が判る。


そして三井物産は、シーメンス事件に、日露戦争に、満州独立に、暗躍した。しかし五一五事件の直前、団琢磨暗殺により、日本を三井物産が作り上げる時代が終焉した。


益田孝の人生を要約すると、日本を裏から作り上げた男が、日本に裏切られるまでの物語、となるのかもしれない。


…でも、ドテライわ〜昔の金持ち。

孫に付いた虫が徴兵されたからって最前線に送り込む様圧力掛けたりって、漫画の金持ちみたい。

鈍翁・益田孝 上巻

鈍翁・益田孝 上巻

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