君台觀左右帳記研究11

下絵の部の話。

東山義政の展觀に供せられたる幾多の繪畫は悉く大家名家の筆墨にあらずして間々無名人師の獨自なる筆墨を交へ居たるや察す可しである。

ということで、上中下の「下」にはなんだかよくわからない画家…つまり中国の有名画家でも、朝鮮の有名画家でもない「ナニカ」が散見されるという事。

んで、下絵の部を通読しても「現代に伝わっている東山御物の絵と確定できる絵」が出てこない。

以下後書きから:

斯くて君台觀左右帳記の成るや我風雅界は之を金針とし之を珍重して其畫家を喜び其畫名を敬慕し其畫風を學ぶことゝ為つた。
(略)
夫れ斯くの如く君台觀左右帳記に於ける繪畫は後人の偽作少からず而も是等の偽物は我風雅界に流布し或は東山御物として珍重せられ左右帳記々録の支那名畫として傳はるに至つたのである。
是等の偽物は殆んど邦人畫家の手に成れるもので特に徳川中葉時代に於て最も多數の偽作を見たる形跡がある。

つまり、事絵画に関しては東山御物として伝わっているものは大概インチキだ、というのが著者の主張である。ただし真筆がない、というのではない。東山御物の該当がない、という事である。


いや読み終わるまで正直意外だったな。
君台観左右帳に載っている画の、特に有名どころは現存しているんだと思っていた。

だって評価高い絵でしょ?買った成金だって大切にするじゃん。なら残るはずだよね。

…それが意外にそうではない、というのが本書の学びって事になるんかな?