逸翁と湯木、香雪美術館

旅行最終日。松江を早朝に発ち伊丹へ戻る。所用と特典航空券と自由時間を計算し、今回は大阪まで新幹線。伊丹から松江という変則旅行だったのだ。

当然帰り道も大阪で数寄三昧。まずは宝塚線乗るついでに逸翁美術館へ。

入口で小林一三の経歴。三井時代は在籍何年、とかで軽く片付けられている。そりゃ恰好良く宝塚歌劇タイクーン気取りたいのは判るが、僕等の逸翁のイメージは高橋箒庵の手下。ちなみに根津青山はパシリ。「一三、見張りしとけ、嘉一郎、午後ティー買ってこい」みたいな。

展示のしつらえはお月見。茶杓玉簾は茶碗上に伏せ置きされていて拝見にならず。残念。

茶室でお点前いただく。ここには裏千家の方2名スタンバイしていた。
ここで出て来る道具にもんのすごく期待していたのだが茶碗は白楽、蓋置は膳所焼。どちらも逸翁手捻りの掻き文字で「雅俗山荘」。
逸翁美術館自体の名称が雅俗山荘なので「なんとか旅館」と書いた湯呑みみたい。微妙な気持。
しかし雅俗山荘は建物老朽化で一旦閉館するらしいので記念かと納得しておく。
逸翁の趣味はかなり成金ぽい。セーブルとかバカラとかなんか宝塚と共通した美意識。

淀屋橋に移動。湯木美術館。とってもちいさな展示室。でも充実。
仁清の色絵武蔵野文茶碗がかわいい。唐物茶入「富士山」がさすがの良さ。
でも丿貫箱書の大棗ってのはなんか眉唾っぽくね?
南蛮ハンネラ建水は不昧公在判。昨日田部でもみたのだが田部の方が良かったな…。
基本綺麗め。料理人だけに侘び寂びよりも清潔感重視か、とは妻の言。

料理人ってそんな儲かるの?ってのが私の感想。

御影へ移動。香雪美術館。

ここは「大正名器鑑 実見記」持ち込むべき。
堅田肩衝、円座肩衝イカス。肩衝に見えないなで肩の堪忍肩衝が面白い。
多種多様な棗を見て、利休形の棗というものがいかに微妙な形状の差でしかなく、かつ絶対的な美しさを持つのか再確認。
菊三輪大棗は不昧公三十のうち。昨日田部でもみたのだが田部の方が良かったな…。
呈茶は大した事なし。
茶入と棗の名品展だが、癖のある茶入オンパレードとバランス良い棗のコレクション。茶室しつらえの展示は秋がテーマでぐっと渋目の斗々屋茶碗。
ここから類推すると、渋い取り合わせに奇矯な茶入を組んで驚かせ、棗は茶入とのバランスで選ぶコンセプトか?社説でアジり温い家庭欄。新聞王らしさか。

この日巡った3美術館は一代で築いたコレクション。そういうものを残す、というのは死後も美意識を表明し続ける事に他ならない。結構恐いことだなぁと思いながら松江、大阪を2日で回る強引なツアーが幕を閉じたのでした。