仮想茶会潜入記

谷晃。

一人のイモータルが桃山から大正まで生きて各種茶会に参加、その体験を語る、という不思議本。大変面白い設定なのにその設定が生きていない、というのが問題だと思う。

まず第一に、一人の主観で時間を横断させるなら、茶会の変遷以前に、茶道の変遷も語らないと片手落ちなはず。

「利休の頃は片膝立ててたなぁ」とか「菓子が甘いものになったはこのころで」とかさ。

そういう中身とかは華麗にスルーされている。


第二に、茶会を開く側が、主人公が不老不死なマレビトであることを知っている。利休や織部と親しくしていた異能人が倍席するのを聞いたら、茶会の趣旨が変わるだろ、普通。


第三に、この主人公を巡るくどくどしい説明でテンポが悪化し、茶会の描写の分量が減っている気がしてならない。


その辺、茶会記で判る事、だけを中心に適当に済ますのなら、この設定は不要。考えすぎの産物だと思う。