鉄の扱い
昔、南部鉄の鍋を手に入れたのでスキヤキを作ったことがある。
ちょっと残ったので「明日牛丼みたいにして食えるかな」とそのまま残してしまった。
一晩放置しただけで赤錆汁のできあがり。鍋は駄目になってしまった。
それ以来、鉄器の錆はトラウマである。
さて、釜は決して素手で触ってはいけない。触る時は布巾で掴む。
手で触ると錆びる、と教えられている。
ところが日本刀の拝見をする時、中茎は素手で触っていい部分である。
「手油があるから少々塩気が手にある程度では問題ない。だが濡れた手は禁物」
と刀屋には言われた。
黒錆がつけてあるものがそれ以上に錆びるには水気と塩気の両方がつく必要がある、という事だろう。
釜に水気をつけないのは無理だ。だからこそ手の塩気が問題になるのだろう。釜には熱も加わる。熱は水の反応性を高めるから、なおさら慎重に扱わないといけないわけだ。
となると気になるのは鉄の蓋置だ。扱った事がないので扱い方が判らんけど、あれって錆びやすいのではなかろうか?
…そういえば刀も通常の使用の範囲内で水気と塩気の条件がそろう事がありえる。でも
「斬ったら血糊はすぐに拭いて、手入れしてくださいね」
とは刀屋に言われなかったな、さすがに。