現代語訳宗旦文書

田中稔 著/慧文社/2004年。

千宗旦のイメージと言うとおおざっぱにこんな感じ。

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         r-、 ,,,,,,,,,,、 /: : : : : : : : : :i   /
         L_, ,  、 \: : : : : : : : :i  / 働いたら
         /●) (●>   |: :__,=-、: / <   負けかなと思ってる
        l イ  '-     |:/ tbノノ    \
        l ,`-=-'\     `l ι';/     \ ニート(24・男性)
        ヽトェ-ェェ-:)    -r'          ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
         ヾ=-'     / /
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…一般の宗旦のイメージとしては

  • 清貧
  • 侘びの境地を開いた
  • 利休の轍を踏むまいと宮仕えを拒否
  • 息子達の職はあれこれ心配してあげる
  • でも長男と仲が悪い
  • 硬骨漢で頑固者

じゃないスか(違う?)。

しかし、この本が描く宗旦像は

  • 自分は職につくのをあきらめている
  • 息子は職につけたい。
  • ちゃんと長男とも仲が良い
  • 貧乏
  • 金に汚い
  • 怨みがましい
  • 行きあたりばったりなのに頑固者

…あんま変わんないか。

宗旦の生計ってどうなっているんだろう?とか思っていたのだが:

沢庵和尚様から賜った墨跡を金一枚(十両)ずつに換金して、此の暮れの用意が十分出来たのでご安心下さい。

手持ちの道具売ったり、墨跡をねだっては流して生活してたんだ、というのが良く判る。
あとは息子からの仕送りな。

一翁宗守を吉文字屋へ養子にやったが、ろくに仕送りしてもらえなかったのか

甚右衛門は一人仕合せで、言葉にもなりません。

なんて言っている。

しかし、長男宗拙へは:

聞くところでは、そなたが目眩がするらしいが、とても心配でならない。先々養生の為上京する様に待っている。

かなり長男を心配した、いいお父さんである。


宗拙は就職できずに酒に逃避して目眩持ち、一翁宗守は岡場所で淋病になるし、宗旦は皮膚病で全身ぼりぼり掻いてるし、なんかこう、求道の理想に燃えた一族、という感じでもないなぁ。むしろ、難儀な時代を難儀に生きた、がんばる人々の様にも思える。
後の世に理想化しすぎたんじゃないかなぁ。そういう人間臭さの方がイイって思うんだけどな。

ところでこの本、対訳じゃないんだよな。
原文を恣意的に訳しすぎなんんじゃねーかと言う疑惑が尽きないのが欠点か。

現代語訳 宗旦文書

現代語訳 宗旦文書