個人蔵
美術館の茶道具で個人蔵、という表記のが時々ある。
この表記は、税務署対策らしい。
佐々木三味「茶の道五十年」でも、大正から昭和、戦後になるにしたがって、大寄せの道具が「だれそれの道具」から「個人蔵」の持ちよりになっていく様が描かれる。
また、シャツ姿で懸け釜に行ったら税務署員と間違われる、というエピソードもあった。
別に高価な茶道具を持っていても、それだけでは税金は掛からない筈だ。
しかし、茶道具を売却したり、他人に贈与したり、相続したりといった、所有権が移動した際には税金が取られる。つまり所得税、贈与税、相続税である。
山田太郎さんが佐藤花子に茶碗を贈ったとする。
税務署がそれを知った場合、鑑定して評価額で贈与税を徴収する。100円で売りました、も通用しない。評価差額は贈与になる。…らしい。後で知っても追徴だよね。
美術館で「山田太郎氏所蔵」と書いて展示し、税務署に山田さんのものと知られてしまった場合。後にこっそり佐藤花子さんに売ってしまい、その後山田太郎さんが死んだ後で、山田さんの遺族の元へ税務署が相続税を取りに来てしまう…などの面倒が起きちゃうんだろうなぁ。
そういうのを避ける為に「個人蔵」という匿名にしちゃうんだろうな。
…まぁ私には関係ありませんが。