箸と飯と汁
懐石では、まず飯を一口頂いて、その後で汁を頂く。
普段の食事では、こんな順序では食べないと思う。
まず味噌汁に箸をつけ、次いでご飯ではなかろうか。
逆順にすると乾いた箸にご飯がくっつき、その後味噌汁でほぐれてご飯入り味噌汁ができてしまうから。味噌汁で箸を湿して、はじめてご飯がうまく食べれる様になるのだ。
では懐石と普段の食事では、なにが違うか、というと、最初から箸が湿されているかどうか。
懐石の箸は濡らして出すからご飯を最初にいただいても米粒がくっつかない。これが亭主の配慮というものだろう。
では、普段の食事でもあらかじめ箸を湿らせてはどうだろう?
料理作ってくれた人の心入れ、とか多分思わないな。洗うの忘れてたんで今洗いました、みたいな感じに受け取ると思う。
では、ついでに想像して欲しい。定食屋で定食を食べる時。割箸にしても塗り箸にしても、湿っていたら、どんな気持ち?
…乾いてる方が絶対ありがたいって。
だから、濡れた箸を亭主の配慮と受け取るのも、ある意味茶事限定の約束事なんじゃないかなと思う。