古事類苑23 釜の湯

如水遺事より:

一、茶の湯一ひ志やく汲取候はゞ又水一ひ志やくさし候て、まどひ置可申候、つかひ捨、のみ捨に仕間敷事、

湯を一杓汲んだら、水を一杓差して、埋め合わせておくように。使いっぱな呑みっぱなにしないように。

…かな?

黒田如水が水屋に貼った注意書きの抜粋である。ファミレスの厨房に貼ったスローガンみたいだ。ちなみに「右我流にてはなく利休流にて候間、能々守可申事」だそうである。


この心は、常に釜に湯をたっぷり蓄えよ、だろう。


湯を使う分水を補充すれば、いつまでもお茶が点てれる。水が足りなくなったら水指に水を補充すればいいのだ。これがお湯だけが釜からどんどん減っていくルールだと、突然お茶が点てられなくなり、しかも減った湯に水を補充しても沸くのに時間がかかる、という事になる。


実はうちの流派は、一杓汲んだら毎回水を一杓差すという程ではないが、割と収支が取れるように水を指す。

悪いが"裏千家茶の湯"の薄茶を比較対象にする。裏千家で薄茶を出す時のルールは以下の様だ。

釜から出る湯 人数+1杓
水指から釜へ入る水 1杓
水指から茶碗へ 1杓


うちの流派だと、釜から出るお湯は

釜から出る湯 人数×1.5杓+1杓
水指から釜へ入る水 人数+1.5杓
水指から茶碗へ 1.5杓


一人に薄茶を出す場合、裏千家ルールだと収支は2-1で釜の湯マイナス1杓である。

うちの流派だと収支は2.5-2.5プラマイ0である。


ここの整合性、うちの流派イイ感じ、とか思う。でも、相当の多人数になった場合。例えば5人にお茶を振舞う際。


裏千家ではおそらく釜から5杓の湯が失われ、水指から2杓の水が失われる。

うちの流派では釜から2杓の湯が失われ、水指から8杓の水が失われる。


釜がよほど小さくなければ5杓湯が減っても茶は点つと思う。でも水指から8杓なくなれば、いくらなんでも水次の出番だろう。


しかし10杯だとどうか。

裏千家では釜から10杓の湯が失われているが、うちの流派では4.5杓。途中で水次すればまだまだお茶が点てれる…と思う。


そういう意味では裏千家の方が有る程度多人数に連続でお茶を点てやすいかもしれない…でもあまり多すぎると釜を替えねばならない。うちの流派は水次だけで結構頑張れる。

でも正直うちの流派は水使いすぎだよな〜。