名物茶入の物語

矢野環/淡交社/2008年。

本書は、現存する茶入に関し、有名なものをチョイスし、いろんな歴史資料にあたってその来歴を検討する、という本である。

例えば。
つくも茄子について:

宗達文琳や小茄子と珠光の関連が唱えられる永禄前期でも、つくも茄子と珠光を結びつける話はまだ作られいない。山上宗二記になって「珠光目利にて出候」といった潤色が行われる。

時代が下るにしたがって来歴が増えてしまった茶入とかも明らかにしてくれていて、大変面白い。


面白いが、研究書的な体裁ではないので、時折ストレスが溜る。

例えば初花肩衝

信頼できる情報では、初花肩衝足利将軍家同朋衆の能阿彌が所持していたという。

その「信頼できる情報」というのはどの資料なの?とか思っても記載がないからだ。


あと、現存しない茶入についても研究が欲しいし、あれこれの本に載っていたなんたら肩衝が、本当に今どこそこ美術館所蔵のものと同じ物か?の検証も読んでみたい感じ。


ところで。

羅災した勢高は藤重が修復したが、

勢高肩衝って藤重が修復した茶入のひとつだったのか…。

平成20年に頴川美術館が勢高茶会を実施している。おそらく飾っただけで実用はしてないんだろうけど、修復物を一般客の前に出すのは結構勇気いりそうだよね。

名物茶入の物語―伝来がわかる、歴史がみえる

名物茶入の物語―伝来がわかる、歴史がみえる