侘びの花入
山上宗二記では、「花入の事」として以下が紹介されている。
- 蕪無×3
- 桃尻×3
- そろり×3
- 鶴一声
- 槌の花入
- 砧花入
- 筒
- トウ(竹冠+甬)×2
- つのき
- 釣舟×2
全て青磁か銅の花入である。
ところが、別の項目で「侘び花入」として以下が紹介されている。
こっちは籠と備前である。但し籠は唐物籠。
侘びという言葉には二つの用法がある。
一つはストレートに「貧乏人」という意味。
もう一つは現代でも使われている、美意識を示すもの。
美意識としての「侘び」は、美意識としての「寂び」よりも歴史が浅い。
当初は「貧乏人」の意味で使われて来た「侘び」という言葉が、侘び道具の集成から逆算された価値観になって、今ではほとんど美意識の意味でしか使われない、というイメージだった。
山上宗二記での「侘び」はどちらか?
これらの侘び花入は、籠と言っても唐物籠。備前といっても紹鴎名物である。
貧乏人の手に入るものではなかろうし、侘び茶人から伝来の茶道具、という意味もなかろう。
天正年間で既に、「侘び」が美意識として通用していたのではないか、という気がする。