美術骨董品投資の秘訣

三宅久之助/実業之日本社/1953年。

実業之日本に連載されていた、美術品骨董品の投資に関する記事を集めたもの、らしい。

骨董品が値上がりする仕組みを、著者はこう説明する。

こゝに一つの美術骨董品があるとする。
その所有者はこれを五千円で満足して手放す。
ところが、その品に対して最大の価値を認める人は、それに十万円を投じて悔いない。
その人が、その品物に関しての、現在に於ける最後の所有適格者である。

ある美術骨董品に対して、いつもどこかに、こういう最後の所有適格者がいる筈である。
五千円から十万円に向つてこの美術骨董品は転々として動く。
それは普通何人かの玄人、素人の手を経て動く。
この九万五千円の空間的価値差をでき得る限り、広幅に吸収した者が最大の利益を納める訳である。

問題は、自分がその最後の所有適格者であって、誰もその道具を自分より高く買おうとはしないんじゃないか、という可能性が有って、それを肯定も否定もできないことなのではなかろうか?



美術品骨董品の、値上がりしそうなものの見分け方が続く。


しかし:

観賞陶器の相場は飽くまで物その物の良さによつて決定づけられ、箱などは、古くても新しくても、有つても無くても、その値段に殆ど関係ないが、これが茶道具となるとすっかり趣が違つてくる。

と言うことで、来歴がものをいう茶道具は若干見分け方が違うと言うことらしい。
…まぁそりゃそうか。


別に転売利殖を考えてなくても、ここでの道具選びの考え方は役に立ちそうだ。

簡単にキーワードを並べてみる。

  1. 分に過ぎた物を買え
  2. 名品に値下りなし
  3. 高いものほど安い
  4. 「美術骨董品の中軸をなすもの」と「需要の範囲の広いもの」


まぁ納得だわね。

でも美術品骨董品が投資になる、という発想って、多分もうないよね?