今日はお点前するのにもってこいの日

夜。いそいそと炭を熾こす。
今日はお点前するのにもってこいの日。

つーか、せんでどうする?雪が積もったんだゼ。明日の通勤のことなんて考えちゃダメダメ。


せっかくの雪をよく見たいので窓を開ける。

音がうるさいのでエアコンを消す。

部屋が明るくて楽しくないので蛍光灯を消し、小さな電気スタンドを置く。


暗い中でのお点前は夜咄みたい。

置き合わせた道具の影が畳に写り、外の雪はあくまで白く、ぼそりと鳴るのは雪の落ちる音。

釜の蓋の隙間から立ち登る湯気は、部屋を暗くしてこそのごちそうか。


さて雰囲気たっぷりの中、お点前を始める。


あれ?

窓からの寒気が点前座に流れて来てちょっと寒い。
いや、寒いのはいいんだけど。


釜の蓋を開けるとお湯が見えねえ。暗くて。
いや、暗いのはわかっていたけど。


正面から釜の湯気が押し寄せて来て前が全然見えねぇ。
窓と風炉との位置関係がいかんのか?

もうもうと湯気が、湯気が。

前が見えねぇ。なにこのブワって感じ。


負けねぇ。

くそ、釜の口の位置くらい勘で探ってみせるぜ。

茶碗の中の茶が開いているかわからねぇ。

茶が点っているか見えねぇ。

ええい、ままよ!茶碗を信じろ!今日使っているのは手持ちで一番点ちのいい奴のはずだ。

…。

よし、はい点った!やったぁーーー!


…いったい俺は何と戦っていたのだろうか?
まぁ風流は風流だったんだけど。