竹窓茶話4 素直

俳人梅道の云ふたことに「世俗にては、姿にても心にても、異様なのを雅とし、手跡にても器物にても、ゆがみ、もじりたるを雅としてゐるが、是は「人我の我」であつて眞の雅ではない、雅は「みたび」とも「たゞしく」とも讀める文字で阿つて、天地萬物の徳をいふのである、手跡も器物も、すなほなるが雅である」と。
かの一行ものの墨跡の、異様、異體にのたくり廻して、讀みにくいものゝ如きは、唐の太宗が、春蚓秋蛇といはれたやうに、瓢逸でもなければ、洒落でもない、無法であつて、寧ろ鬼面を装つて人を脅す底の衒氣もみえて心にくいものである。
盲千人の世の中で、盲を脅かすには足るけれども、志あるものは心の中で之を蔑すみ輕んずるのである。
(後略)

戦前の段階で、商業に堕してケレンの有り過ぎる墨跡に関して警鐘を鳴らしていた人がいたんだなぁ…。

にしては何も変わらないんだなぁ…。