槐記23 唐物

享保十九年七月八日:

或人ノ申セシハ、凡ソ今ノ世ニ、茶入ニ唐物々々ト申スハ、皆藤四郎ナリ、
定メテ唐ノ土ニテ、唐物ニ寫シテ作リタルナルベシ、
唐ヨリ傳來シタル物ニテハナシト承ハル、左ニテ候ヤト伺ウ、

去レバトヨ、是レ古來ノ定説ニテ、左申スコトナリ、
夫ハナゼ左申スコトゾトナレバ、今ノ世所存ノ、唐物茶入ト云物ニ、
土藥トモニ外ノ燒物ニ似タルモノナシ、凡ソ唐物ノ水指ノ燒物ノ手ハ如此、
南蠻ノ手ハ如此ト、大形ノキツカケアルモノナリ、唯唐物ノ茶入ノヤウナル燒方ノ物ハ、水指ニモ、外ノ器物ニモ、曽テナキモノナリ、
夫故ニ茶入モ、土ハ唐ニテ、燒方ハ唐物ノ燒物ニ似タル物モナシ、
去程ニ藤四郎ニテアルベシトノ推量ナリ、

「茶入の唐物っていうのは、藤四郎の作ったものなんだ。中国から輸入した土を使い、唐物を写して作ったんだ。だから唐から輸入した道具ではないんだよ?…って言うんですけど、マジすか?」

「そーなんだよー、それが定説だよね。なんでかっつーと、唐物茶入の土も、釉薬も、他に見たこと無いものだからなんだ。唐物の水指はこう、南蛮のはこうって鑑定のとっかかりがあるんだけど、唐物茶入ばっかりはそれがないんだよね。土は唐なのに、焼き方が唐に似たものがないから、藤四郎が作ったんじゃねーのって事になったみたい。」


唐物の定義に関しては以前書いたことがある。
http://d.hatena.ne.jp/plusminusx3/20101128

なぜ唐土を日本で焼いたか、という事が理解できなかったが、この話ですっきり。
ただ、茶入はもともと何に使っていたものなのか全然はっきりしないという点は未解決だが。

まぁ近衛さんもこの話の後半で、唐物水滴に似たのを見つけて「やほーい唐物ってやっぱり唐物だったんだー!すっきりー」みたいな話になるんですけどね。