塗りの椀

椀を買って思ったのだが、塗り物は高価なものと廉価なものの区別がつきにくい。


木地の質一つとっても、木地師がちゃんと一つ一つ挽いた挽き物のものと、木の粉を型抜きした木乾のものでえらく値段が違うのだが、見た目にはそんなに違わない。


蒔絵とかあれば別だが、漆の質がどうで塗りの仕上げがどう、みたいな事は普通は判らないと思う。


さらに。


懐石椀なんてみんなあんまり気にしない。


お客さまも、少なくとも棗や真塗りの手桶とかほど真面目に吟味しては見ない。


これが主茶碗だとどうだろう。


五千円の茶碗と三万円の茶碗、そして十五万の茶碗の間には、厳然とした差があって、普通はどうにもならない。
どうにかするにはトンチが必要、と言ってもいい。

しかし、塗りの椀としては、五千円でも、三万円でも、十五万でも、そんなに大きな違いをお客さまに感じてもらえないかもしれない。
むしろ安く上げた方がお徳なくらいである。


そういう意味で、塗りの椀は、安いのでもなんとでもなるという意味で、財布に優しい代物だと思う。