わたくしの懐石 その心と料理

数江瓢鮎子/婦女界出版/1983年。


実にタイトル通りの本。

多くの写真が載っていて楽しい。

序文から。

戦前のことですからずいぶん古いことになりますが、小さな女の子たちが、木蔭の砂場に敷いた茣蓙の上で、飯事に夢中になっているのを見たとき、思わず「ああ、これだ」と、膝を打ったことがありました。

そのころ茶の湯の研究のことであれやこれやと悩んでいたものですから、この女児たちの遊びに出会ったとき、とっさに「茶の湯とは大人の飯事と見つけたり」と、思い付いたのでした。

こういうと申し訳ないが、割とありがちな感想。
でもこの頃はこういう事がすごく斬新だった…のかもしれない。

序文の最後に言う。

口腹の業にすぎない懐石が、茶の湯にとってどれほど重要な役割をもっているのか、また懐石に対する主・客の心得が、茶の心とどういう関連をもつのか、そういう問題をいくぶんでも明らかにしようとしたのです。

なにせ頑張れば頑張るだけ「ああ、おいしかった」という原初の衝動の方に振れちゃうんだもんね。

実に難しいテーマである。