寸松庵色紙の習い方

安東正郎/梅雪假名叢書刊行會/1939年。

「…習い方?」タイトルに惹かれて買った。でも英訳したら「How to learn」だから別に普通か。

安東正郎は聖空の号の書家にして古筆研究家、らしい。


まずは「散し書」の定義から。

「散し書」とは如何なるものをいふ語であるか。
(中略)
言海の示す所によると、徳川中期正保の頃(約二百八十年前)の人で松江維舟の著に毛吹草といふ書物がある。この中に、

風の手もいろはの後やちらし書

といふ句があるといつてゐる。しかもこれが記録されたちらし書といふ語の最も古いものゝやうであるから、ちらし書なる語はさう古いものでないといふことになる。

では、もっと昔はどう言っていたか。

然らば古くは何と稱せられて居たであらうか、私は古い物語などに出て來るあしで、又はみづて或は歌繪の語をたよりに少しく調査を進めた。

「あしで」について調査が進む。

大日本國語辭典の「あしで」の條に、

文字を葦の生ひたる状に書くこと

とあり、更に言海には、

手トハ文字ヲイフ(手習、女手)。字類抄「葦手アシテ文字也」葦ノ生ヒタル如キ文字ノ意ナリ

とある。
即ち行の長短が不揃であたかもあしの生へて居るやうに見える所からこの名が出來たと解してよい。
かく考ふれば、あしで即ちちらし書と考へてよいと思ふ。

勉強になるじゃないか(茶席の蘊蓄にいいかもね〜)。