牧谿と梁楷

武者小路実篤/座右寶刊行會/1946年。

武者小路実篤が「牧谿イイヨ〜!梁楷イイヨ〜!」と語るだけの、何の深みもない本。

牧谿の小品の柿圖は不思議な畫である。
何處が不思議かと言ふと、何でもないやうに見えて、實に何とも言へないいゝ畫なのが、不思議である。
なぜこんな畫がこんなにいゝのか、見當がつかない。まして説明が出來ない所が僕には不思議なのである。
だゞ六つの柿の實が、どれも蔕を上にして並んでゐる畫で、その内の一つが前面に出てゐる外は殆ど一列に並んでゐるにすぎない。
かき方も別に變つてゐるわけではない。
一寸見ると誰でもかけそうに思ふ。それでゐてその味はすばらしい。すばらしい以上と言ひたい程、結構な畫である。

あまりに賛辞が続くのであとは省略。

ちなその柿図下な。

…どこの家にでも飾ってあった武者小路実篤の「仲良き云々」って牧谿への憧れからできてたんやな。

我々は武者小路実篤を通して牧谿に親しんでいたわけか。
こんな風に茶の湯の美意識は日本人に浸透してきてたんやな。