釉から見たやきもの13 釉の生理

本来なら釉の物理と書くべきだろうかと思います。
しかし、実際にいろいろ試してみると、物理という堅い法則性より生きものの持つ柔らかい不規則的な生理を釉に感じます。
それで生理という言葉を選びました。

あいかわらずのロマンチストである。

写真41は昭和熔岩の石ころです。
(略)
つまり、この石にはガラスや長石や、呈色剤の鉄などがいっぱい入っているのです。
今この状態では黒燿石のようにピカピカと光ってもおらず、焼き上げた釉のようにきれいな膜状にもなっていません。
でも中味をみますとガラスや長石だらけです。ナントカしてナントカすればきっとガラスが得られるでしょう。
そのナントカのひとつは「融かす」ことでしょう。そしてあとのナントカは「急激に冷やしてやる」ことでしょう。

ということで著者は鹿児島の昭和熔岩を題材に、さまざまな実験を行います。

桜島の熔岩を融かすのにはそんなに高温は必要ではなさそうです。
(略)
次に「急速に冷やしてやること」、これはなにも一秒か二秒で、1〇〇〇度から常温まで冷やすことではありません。
何十日も何年も、いや何百万年もかけて冷やすのでもなく、何日以内かで冷やすことです。
つまり、われわれの窯が冷えて行くスピードで冷やすのが、急激に冷やすことになるのです。
地球と言う大陶芸家は、人間の窯に比べて桁外れに大きなスケールの冷却窯を持っています。
ドロドロに融かしたものを、なかには一千万年もかけてゆっくり冷やして行く装置も持っています。
そうすると御影石のようにまた黒御影のように、長石は長石で、硅石は硅石で…といった具合に結晶鉱物の集合になります。
ところが急激に冷やしてやると、結晶にならないで、ドロドロのまま冷えて固まってしまうわけです。これがガラスです。

このあと熔岩釉を塩酸で処理したり石灰を足したりして効果を比較しますが、そこはオミット。専門的すぎるしな。

すでに著者のロマンチシズムが堪能できればそれで良くなっていると言う…。