松花堂昭乗7

昭乗の、墨と水のエピソード。

また昭乗は墨をも製して書いたといふ事が傳はつてゐる。
『譚海』(二の三六五)には「松花堂は生涯墨を製して書たる故、墨色にて眞跡はわかるゝ也」と記してある。とにかく斯道に熱心なる事を窺ふべき話である。

ほんまかいな?というレベルのお話だけど、そんな単純なら苦労がなくていいね。

かくて昭乗は近衛信尋の推擧により、将軍家の書道師として江戸城に至つた。
時に老中等彼の書を試し見ようとて、白書院で彼の有名なる蔦の細道の文臺に合具を置き書初めを乞ふた。
昭乗は驚きもせず、我れ生れてより石清水の靈水のみで筆を執つたので、吾妻の水で筆を執ることは出来ないとてあやまつた。
それなら取寄せてやるとてその日は下城した。

なら自分で持参しなさいよ。何しに行ったんよアンタ。
水を取り寄せてもらえなかったらただ飯食らいだよ。

一週間程して靈水が來たので試筆を乞ふた。
昭乗硯に水を注ぎ一回墨をすつて曰く、此の水は石清水の靈水ではないとて水の講義を長々と述べた。

このエピソードは茶の湯の水の吟味が元じゃないかな?
でも、お茶は求道として、客に出す水の吟味だったり勝負だったりだからまぁいいけど、書道でこれだとただのワガママさんである。
「弘法は筆を選ばず」の方が上のエピソードよね。