茶道具の用と美12

三田 東京には喜三郎という塗師がおりまして、喜三郎の前に亡くなった叔父さんになるのですかね、その方のお椀というのは、押えるとお椀がヒュッと曲がるんですね。あんまり薄過ぎてね。おそれでいつだったでしょうか。引盃をふいた方がいぎってしまった。あんまり薄くて、ちぎれてしまったんですよ。向こうが見えるようなんですね。それは東京風に粋なふうにできているんです。薄く、向こうが見えるかと思うぐらい。
中村 大体、木地は大変薄いんです。ロクロで挽いた木地は本当にヒヨヒヨとする。それを木地固め、地つけ、錆つけと下地をして固くなるのを待って研いでほどよい厚みに仕上げていくわけなんですね。

普通はうっすい木地に漆を染み込ませ、布を貼って錆漆で布目を潰して…と手順を踏むと、そこそこの厚さになり固くなる。
そうそうたわんだりちぎれたりするものではない。下地を相当省略した塗り物なんだろうか?

三田 (略)でも、そのときに、「その責任は正客にある」と鈴木宗保先生はおっしゃいましたけども。 いかに言っても、ちぎれる塗物は、見た目にどれほどよくても、客にも失礼であったし、亭主も困るしと思って、そのときに、その盃の塗りについてすごく疑問に思ったことがございます。(略)

今日の本題はこの部分。
あの鈴木宗保が言うんなら、正客のせいなんだろう。

つまり、茶席で客が行うアクションは、正客が指導して責任を持つもので、「引盃が弱い」と思ったら
強く拭かないよう/あるいはまったく拭かないよう、注意しなきゃいけないわけか。

責任重ーーーーーーーい。