床の間の構成 装飾編5

室内装飾としての床の間の構成は、前記の架構美や材料美と共に、その床の間や棚や書院に對して添加する美術品によつて綜合的な美の構成と表現が成立する。
然しその添加する美術品なるものは高價な寶物的價値あるものによつてそれが装飾的價値を高められるのでなくて、調和、相應、趣味等による美術鑑賞の立場から床の間の装飾が生きてくるのである。

著者は、床の間の飾り物に関し、高価さでなく、調和を説く。

そして、各種工芸品に関し、どの時代のどういうものがよいかを解説する。
まずは絵画から。

我國の原始美術としての繪畫は、墳墓等から發見された副葬品としての土器や、銅鑼の如きものに對して、僅かに線描寫やシルエツト描寫の日月、雲霧、鳥獸、草花等の繪畫のみであつて、原始的繪畫が今日床の間装飾として鑑賞されることは到底出來得ないものである。
(略)
推古時代
(略)
此當時の繪畫としては支那風に朝鮮一種の樣式を帶びたもので、今現存するものとして、大和法隆寺の金堂にある玉蟲厨子の密陀畫等は、即ち東洋最古の遺品として最も代表的のものではあるが、所謂佛教美術に屬する國寶的のもので、この時代のものも到底一般人が室内装飾として鑑賞出來得るものではない。

床の間に置ける置けない以前に入手困難過ぎる。

んで最終的には:

徳川時代
(略)
現在多くの古畫として取扱はれてゐるものは殆んど當代のもので、おそらく床棚の装飾としての一般的な畫幅は當代のものゝみと言つてよい位である。

妥当な評価である。

というか、江戸時代に床の間が普及してはじめて商業絵画が成立し、商業絵画が成立したから、伝世品がこの時代のものなのは当然といえば当然やな。