床の間の構成 装飾編10
床の間の装飾に、その家庭趣味や個人趣味が織込まれて、その構成する各種の装飾器具や什器等も、あらゆる趣味的立場より装飾の内容や形式をあらはすものである。
もとより装飾の根源をなすものは趣味であり、趣味によつて装飾が構成されるものであるが、床の間の装飾構成に對して特に、その家庭なりその家に住む人達の趣味が多分に織込まれて、單なる美的感情のみでなく、その藝術趣味に對する比較、評価、聯想、經験、同感等による個性の統合が發見され、その個性の相違に従つて装飾趣味の高級低級が生じ、趣味の基準が表はれてくるのである。
何を言っているかよくわからないが:
斯くの如く床の間の趣味的装飾は、家庭なり個人の個性を最も優美に表現し發揮するものである。
で〆てあるので、形式的装飾とは別に、個性や趣味を床の間に表現できるよ、といいたいっぽい。
じゃぁその実例。
製作趣味としては、家庭に於ける手工藝品であつて、即ち刺繍、染織、木彫、陶器、其他新興工藝としての革細工や金工等のいろ/\のものがあり、最近小の種の製作趣味が多くの人々によつて、藝術的な宗作意慾が織り込まれ、非常な勢で進展されてゐる。
ああ、「おかんアート」か。戦前も変わんないんだねぇ…。
藝術愛好趣味の上から、床の間の装飾具なるものを調べて見ると、先づ第一に音樂趣味である。
これは楽器やら能衣装を飾るものである。
近代的な趣味として最近著しき進展を來し、老若男女を問はずして普及されたものにスポーツ趣味が有る。
(略)
先づ陸上競技として、野球趣味の場合は、先づ優勝カツプの装飾はもとより球、バット、ミット、グローブ等の運動具、或ひはホームラン王ベーブ・ルースの像等、それらの表象せる彫刻、鋳金等の置物があり、或ひは優勝選手の寫眞や、シルエット等もよい。
床の間にグローブか…。
なんでもありだなぁ…。
私は現代に置いて「床の間」という文化は死んだと想っている。
建売住宅の合理化と、家族ぐるみ交流の鈍化により、そんな無駄なスペースがあっても仕方ないし、来客も尊重しなくなった、と思っている。
この時代、床の間はまだ顕在だった筈だが、既に末期の混沌感がかもしだされている気がする。とにかく何でも置いちゃおうって形での最後のあがきではなかろうか?