北野大茶湯輯成

京都美術青年會誌。昭和十二年発行。

昭和北野大茶会についての記録。どんな道具があったかなど詳細に記録されていて面白い、というか、壮大過ぎる。ついていけない。


50の座敷。通しで5日間の席もあれば、1日限定の席もあり。基本大寄せだが、茶室の他に大量に人の来る立礼の大衆席というのがあったみたい。

大衆席、天正舎での記録は1万人を突破(そんだけ菓子も出したワケ。ちなみに使った抹茶は5貫≒19Kgくらいらしい…)。1席50人くらい(数茶碗100個を半々に使用したらしい)。という事は1万÷5日÷50人=40回。一日40回も回転させたわけだ。1時間4回で廻しても10時間。大変だこりゃ。


さて、この本で面白いのは裏方をやっていた青年会の対談。菓子盆や点出しの茶碗ががんがん持ち帰られちゃったこととか、大寄せやるなら給湯設備をなんとかしないと、とかの反省もおもしろい。

にしても

O 時に君ら水屋にゐてその最中、點出しの茶碗を一々洗つたかい?(大笑)。

おそろしいツッコミである。

「この茶会に集まった名物が、すべて自分のものだったらどんな道具組をするか?」という一節では

E それに豐公の茶杓、喜左衞門井戸と來るか、譯はないよ。
N それで一席できたとして、他の井戸茶碗全部で豪華な點出しをするかな。(大笑)

気宇壮大、とはこの事か。

さて、今、静嘉堂文庫の展示室入口にある御所丸黒刷毛。

正直にいふとわれらには猫に小判であつた。
見こみにカセ多く、切箔風に白釉をわづかに殘した黒織部にしかみえなかつた。
後から京都の茶人、鳥居雨夕さんに會つたら
「あの茶碗は高臺を見てはじめて有難さがわかつた。こんどの茶會の横綱でせうな」
と聞かされた。

俺にも黒織部っぽい御所丸にしか見えんかった。もっとじっくり見りゃ良かったな。