茶湯一会集

日本の茶書2より。井伊直弼著。

一期一会とか、独座観念とかの概念が含まれる為、茶の湯思想書の様に思われているが、実際には異常に細かい茶の湯テキストである。

その記述粒度は現代に記述された「裏千家茶の湯」より上かもしれない。

着物の種類に色味の指定とか、掃除の仕方とかからはじまり、

客、両便に参る事は、此の時、腰懸に落ちつきたらば直ちに申し合わせ、一人づつ参るべし。

トイレの行き方まで指定されている。なんとそれだけではない。

砂雪隠と下腹雪隠と二つあらば、下腹の方へ行く事、勿論也。
(中略)
拠無く、砂雪隠にて大便調え様は、先ず砂かきにて砂をかきならし。紙を敷き大便を調え、上にまた紙をちらし覆い、其の上に砂を懸け置き候事、古来の仕方なれども、可成丈参らざるがよきなり。

万が一飾りトイレで用をたさざるを得ないピンチ時の対応法まで書かれている。微にいり細にいり、すさまじい。

こんな性格の人にきっちり締められていたんだとすると、安政の大獄というのは実に大変なものだったんだろうなと思える。

しかし気になる記述も。

他流に、出家の茶服と号し、長合羽の如きあやしき服を着する事、有るまじき事也。

いや、いったいどんなもんがはやってたのやら。