北村美術館 吉野懐古

北村美術館の入口は外階段を昇って二階にある。
この階段を昇る時、昔通った歯医者がこんな入口だったなと思い出す。

北村美術館のエントランスは美術館然とした雰囲気ではない。おかげで、北村さんちを御訪問する、そういう感覚で美術館を訪れる事になる。

実際、北村美術館の展示は「茶会の道具組」スタイルである。出品目録も会記の体を成しており、寄付から順に拝見させて頂く。そんな感じになっている。

北村美術館は他の美術館に比べて「もんのすごい」道具が多数あるわけではない。その分、道具組で魅せる美術館である。

今回のテーマは吉野にちなんだ茶会。金輪寺とか、桜皮の炉縁とか、素敵な道具組だと思う。

ただ、訪れた日がえらく暑い日だったので「吉野」って気分でなかったのが残念。
去年は花見がテーマで、GW前に初夏へむけ一部展示替えがあったのだが。

一順拝見し、たまたま受付にだれも居なかったのでそのまま外へ出た。階段を降りて、前の道を歩いていると、ちょっとあわてた感じでエントランスのドアが開き、北村美術館の方から声を掛けられた。

「本日はお越しくださりまことに…」云々。

美術館で見送られたのは初めてだ。

やっぱり茶会なんだなぁここは。