茶人の逸話

筒井紘一 著。

この手の「茶人の逸話」って奴は、概ね茶席での数寄談義のネタ本だと思っている。

んでこういう逸話集は、300年前から出版されて来た。
師匠→弟子の口伝だけでは伝言ゲームで話が改変されていくし、なかなか伝播がすすまないので、昔から必要な物だったのだろう。

利休がこうしたとか、不昧がこう言ったとか。茶の湯の会話に必要な教養のベースラインだったのだと思う。


ただ、桃山時代、江戸時代の茶人に関する逸話と、明治大正の数寄者に逸話は意味合いっつーか方向性が違うな、と思う。
江戸以前の茶人の逸話は、教育効果っつーのがある程度考えられた話の様に思う。
だが、近代数寄者の話はたんなる無茶話/馬鹿話が多い。

例えば。

益田紅艶:

紅艶の出席した会で、懐石の食べ残しが出ると、何人前でもすべて引き受けてくれるので、(中略)紅艶を評して「茶席中の豚」と言っている。

「昔、鈍翁の弟さんに紅艶という人が居て、この人をお詰めにしていると残菜入れがいらないと評判だったらしいですのよ?」

こういったエピソードは茶席での数寄談義に成り得るのか?

茶人の逸話

茶人の逸話