古田織部〜桃山文化を演出する〜

矢部良明/角川書店/1999年。

千利休の創意」と「茶人 豊臣秀吉」の間に出版されたもの。

本作ではあえて「織部茶碗を指導したのは織部か」という問題はごくごくさらっとしか手を付けていない。美濃焼とつながりはあったろう、という推測を述べるまでである。

また「織部の死の原因はなにか」という問題も不問。織部の死は織部の創意や成果となーんの関係もない、という割り切りだろう。武将、大名としての織部もオミット。茶人としての織部に集中して論証している。


風炉の熱気に慌て台子の天板に頭をぶつける粗忽者。
宗旦にヘタクソ呼ばわりされる天下一宗匠

そういった通俗的な、人間くさい部分も紹介しながらも、やはり比較的信頼できる資料をベースに織部像を描き出す。

新物道具を使い、現代につながる様なカジュアルな茶を始めた織部
利休が推進した棗/茶入同格の濃茶を、茶入優位に誘導しなおす織部
しかし仕覆なしでぞんざいに茶入を扱って見せる織部
墨跡を飾らなかったりする割に花に執着を見せる織部

本書を読むと、ひょうきんで大胆。だが優しく風流な武士の姿がうかんでくる。

それとは別に、利休のお茶の終りと、遠州のお茶の始まりが見えて来る。厳しい美の時代が終り、自由奔放の時代が来て、身分制の中でのお茶がやってくる。その足音が聞こえて来るかの様だった。

古田織部―桃山文化を演出する (角川叢書)

古田織部―桃山文化を演出する (角川叢書)