武野紹鴎−茶の湯と生涯

矢部良明/淡交社/2002年。

利休→織部→秀吉と来て、紹鴎を紐解く本書。

意外に資料のない紹鴎を同時代資料から解くと、唐物名物の寂びた茶そしてゴジャースな茶。両立する時代なんだからしかたたない。

茶の湯オピニオンリーダーとしての紹鴎。茶商としての紹鴎。そして茶の師匠としての紹鴎。

…カリスマ性から人間的な欠陥まで、些細な資料からほじり出した紹鴎は、なんとも魅力的で、なんとも醜い。

「目もきかず、茶も天下一下手也」な辻玄哉が、なぜ紹鴎の一の弟子なのか?という視点は無かったなー。

江戸時代に名物と称された物は紹鴎名物であり、利休の道具はほとんど含まれていない、という指摘は、納得感とともに、ちょっと切ない。

君台観左右帳記にある書院の飾り方は、茶の湯の床飾りとは全く関係なく並行して存在し、江戸時代に大名の書院飾りになった、という指摘は大いに同意である。

賛成できないとこもある。釣瓶、面桶、竹引切を侘び茶人救済の為に紹鴎が開発した、という視点。先生!紹鴎クンはゼイタクが行くとこまで行きついて、貧乏ごっこがしたくなったんだと思います。

しかし、床は総飾りにし、亭主の他にお点前さんがいて、桃山時代より若干広めで立派な座敷で行われる茶。…大寄せって、紹鴎時代の茶を今に引き継いでいるのかも。

武野紹鴎―茶の湯と生涯

武野紹鴎―茶の湯と生涯