茶の湯の祖、珠光

矢部良明/角川書店/2004年。

資料のろくにない珠光を探る為に、著者は桃山時代の神格化された珠光から話を始める。
そう、珠光は桃山時代には勿論、神格化された存在であった。
それは、桃山時代にも既に、珠光に関する正確な事跡が伝わっていない事を意味する。

珠光は、会所の茶や林間の茶の時代に、身分や立場に囚われない、いまに繋がる茶を始めた。そして、単なる唐物崇拝の序列を、美意識でもって変更を始めた。結局は唐物の中での序列変更でしかなくとも、それは当時としては革命的なことだった。

そういった茶の湯創世期の雰囲気を、著者は描き出す。

もちろん、本当に珠光がそれらのことをしたかどうか、それらの事跡の創始者であったのか?そんな事は判らない。

しかし、珠光に象徴される創始期の茶人達の仕業として著者は受け止めている様に思える。

会記と日記から導くいつもの切れ味は今回はちょっと鈍目。まぁ仕方無いけど。でも面白かったからいいか。

茶の湯の祖、珠光

茶の湯の祖、珠光