漆職人の昭和史

森伊佐雄/新潮社/1992年。

宮城県古川市の漆職人の語る昔話。

漆職人、というより、漆塗り屋の息子が老職人の引退で慌てて漆職人になる話、という方が正しいか。

職人の生活とはどんなものか?
木地師や漆掻き職人とのつき合い。
いろいろ面白い。

特に、柿渋下地の為に一家総出、近所まで巻き込んでの渋柿つぶし作業は圧巻で、なんともほほえましい気分になる。

ま、渋下地なので、松田権六あたりに言わせると、安物のしっかりしていない下地、って事になってしまうのだろうが。

生漆を買って、注文で箪笥に塗る。そんなので手間賃を稼いでる塗師の姿を読むと、松田権六による市井の漆塗り評価は、金に困らないお偉い先生の暴言だなって思える。


ただ、本文最後が尻切れトンボになっており、作者急逝をうかがわせるのがちと恐い、かな。

ところで、実はいろんな職人の本を読んでいて思うのだが、どうして職人は、自分がいつどこで童貞を捨てたか、という事を暴露したがるのだろう?

これ最大の謎である。

漆職人の昭和史

漆職人の昭和史

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